ほかの仕業人、大出俊が演じる「やいとや（鍼灸師）又右衛門」は、キザで皮肉屋で色男で縁起かつぎ。真っ赤に熱した針を急所に刺すという必殺技をもっている。
　小雪の舞う夜の路地で主水が出会った男、赤井剣之介（中村敦夫）は、身分の高い武士だったが、藩を裏切って、お歌（中尾ミエ）とともに追われる身。つまり、おたずね者の逃亡者にまで落ちぶれ、顔を白塗りにして大道芸人に身をやつしている。
　お歌との愛を選んだものの、「もし、出世のほうを選んでいたら今ごろは……」との思いが、剣之介の胸中にはある。気合いとともに大太刀を抜き放つだけの一発芸は、自身も気が乗らず、客受けもよくない。上級武士だったプライドを捨て切れていないだけに、うらぶれた現状がやりきれない。そういった全編にただよう虚無感と退廃したムードが、この作品の特徴となっている。悲愴感のあるＢＧＭも味わい深く、また効果バツグンなのである。
　オープニングのナレーションも、斬新このうえない。時代劇なのに、いきなりサングラスをかけた宇崎竜童のアップが出てきて、「あんた、この世をどう思う？　どうってことないか。あんた、それでも生きてんの？」と喧嘩腰で始まる。「（略）おい、あんた聞いてんの。聞いてんのかよ。あら、もう死んでやがら。はぁ～っ、菜っ葉ばかり食ってやがったからなあ」
　リアルタイムで観ていた視聴者は驚いたことだろう。
　この前作『必殺仕置屋稼業』のオープニングも現代の風景から始まったし、必殺シリーズにはこういった型破りなところがあって、とくに前期はとんがっていた。
　第一話『あんたこの世をどう思う』の終盤。やいとや又右衛門は、剣之介など信用できないと言って、仲間に加えることに反対する。そんな又右衛門に、主水はこう言うのである。
「やいとや。俺だって、おめえなんか、はなっから信用しちゃいねえぞ」
　えっ、という感じで顔を向ける又右衛門に、主水はさらに言う。
「俺たちゃ、他人様の命うばってゼニかせいでる悪党だ。だから仲間が欲しいんじゃねえか。地獄の道づれがよ。その道づれを裏切ってみろ。地獄へも行けやしねえじゃねえか」
　ハードボイルドである。そもそも「反社会性とはなにか」というコンセプトで製作された作品であるらしい。そして最終回『あんたこの結果をどう思う』では、剣之介夫婦にどんな運命が待っていることか。初めて観る人は楽しみにしていただきたい。
　それにしても、つくづく思うのである。こういう格好いいドラマ、今はないんだよなあ、と。
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　それに、たとえ友達の著作でも、読んで面白くないものを薦めることはできない。心にプラスの読後感を残す本だからこそ、当ブログの読者にも紹介したいと思うのだ。
　今作は、２０万部を超えるベストセラーとなった前作の姉妹編である。著者の本業は税理士、つまりはお金を管理するプロフェッショナルだけあって、お金に関する持論やエピソードの「引き出し」を多く持っており、それによってオリジナリティの高い一冊に仕上がっている。
　ただひとつ注文があるとすれば、せっかく個性的な内容なのだから、題名に「なぜ～」を使ってほしくなかったことだが、まあそれは新書の定型のようなものだし、そもそも書き手と編集部の領分であることは言うまでもない。本編はあくまでも刺激的である。
　今作にもお遍路の話が出てくる。筆者もこのブログで、お遍路の経験を何度か書いているが、そもそも四国へ渡ったのは、亀田君に勧められたことがきっかけだった。
　著作にも出てくる焼き鳥屋で飲んだ後、彼のマンションに泊まって明け方近くまでお遍路の体験談を聞いたのは、１０年以上も前の早春の時分である。
　筆者はそのころ無職だった。亀ちゃんは、人生の転機なのに平気でぶらぶらと無為な日々を過ごしている友人がもどかしかったのかもしれない。歩き遍路を経験できる絶好の機会だと思って、熱っぽく勧めてくれたのだろう。根が単純な筆者は、話を聞いて発奮し、「そうか、じゃあ行くよ」と四国へ旅立ったのだ。このことは今でも感謝している。
　さて、税理士といっても天下りではなく、難関の試験を突破して開業するに至った亀田君だが、頭脳職に就いているからといって、彼が青白いインテリだと思ったら大まちがいである。お金に関する修羅場を経験し、一時はなんとホームレスにまでなっている。その当時のことは筆者もよく知らないのだが、今にも壊れそうなボロボロの多国籍アパートで暮らしていたこともある。それだけに、お金の話ひとつをとっても言葉の重みが違うというわけだ。
　そして現在は、バルコニーからライトアップされた東京タワーの夜景が望める高級マンションに居を移し、テレビにも出演し、税理士として成功している人物なのである。
　……と書くと、なんだか友人を褒めちぎっているようだが、どこかに敬意というものが介在しなければ、こういった関係は長く続かないのかもしれないな、とも思う。
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　だいたい作文なんて、個人的には「書けなきゃそれまで」と思っているのだが、わざわざ対策用の講座が設けられているからには、それなりに需要があるということだろう。
　前回、最下位クラスのことを書いたが、逆に上位クラスの中には、小学生でもするどいやり取りを交わせる子がいて、知的な意味で面白い。
　この前、物語を書きましたと言って見せにきた子がいたが、原稿用紙にたった３枚できちんとしたストーリーになっていたので、感心した。星新一風の宇宙人ものだったが、小学生がなかなかできることではない。
　でも、そんなのは例外で、記述講座の作文の中には、たまに笑ってしまうものもある。
　椋鳩十の『片耳の大シカ』という作品を読んだ感想では、こんな一文でしめくくられていたのである。→「これからは、もっとシカのことを考えなければいけないと思った。」と。
　そりゃあ、社会的な問題に関する作文なら、「私たちは、これからもっと～考えていかなければならない。」という終わり方もあるだろう。でも、シカを題材にした動物小説を読んだからといって、これから本当にシカのことを考えていかなければいけないと思うのか。
　リンゴについての自由作文でも、「私はこれからもっとリンゴのすばらしさを世界に伝えていきたい。」という結びがあったが、君は本当にこれからリンゴを世界に……と訊きたくなる。
　こういう紋切り型のしめくくりが目立つのだ。
　でも、無理もないと思う。今までの人生で考えたこともないテーマを、いきなり突きつけられたのだから。十一歳や十二歳でそんな命題にさらさらと対応できるほうが特殊であろう。
　また、紋切り型でいいのである。小説や詩や随筆などの文芸なら「なんでもアリ」だが、記述問題の解答や作文となると、芸術ではない。だったら型にはめてしまうほうが書きやすく、また先生の立場で教えられるのも、その枠組みのパターンなのだ。
　などと偉そうなことを書いているが、筆者のこのブログだって、そんなに褒められた内容でないことは自覚している。
　だいたい、空手道場のブログなのに、紀州の誰がどうしたとか、必殺シリーズがどうしたとか、関係ないことを書きすぎている。これではいけないのではないだろうか。これからはもっと空手のことを考えなければと思った。
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　ひとの授業を聞きながら鼻クソをほじりやがって……と思う。
　しかも、鼻腔内の採掘だけではあきたらず、その指先を口の中に運んでいる。つまり、しゃぶっているのだ。
　クセになっているようで、何度もくり返している。体内の塩分を、いったん外気にさらし、さらに体内へ。環境にやさしい循環型社会ならぬ「循環型人間」である。
　あまりにくり返すので、近くの席の子も気づいて笑っている。筆者もとうとう「○○、鼻クソ食うな」と注意したら、机に伏せて泣いてしまった（と思いきや、じつはウソ泣きだった）。
　屁をこくやつもいる。この場合はきまって男子で、さすがに女子にはいない。くさいにおいが教室に充満して、みんな鼻を押さえることになった。やった本人はゲラゲラ笑っている。
　洒落にならない悪臭だったので、「今度から、屁が出そうになったら自主的に外へ出るように」と注意した。小５のクラスだったが、なんで塾でそんな注意をしなければならないのかと思う。そして、そいつは本当に、次回みずから外に出て放屁したのである。
　また授業中、いきなり「お母さんのパンツのにおいを嗅いだ。……くさかった」
　と、ぽつんと言った男子もいた。これも小５である。さすがは最下位クラス、なんの脈絡もなくそんな言葉が飛び出してくる。授業などまったく聞いていないのだ。
　となりの席の女の子が「ヘンタイ」と言って顔をしかめ、筆者も閉口したが、同時に、いったいなにがどうなったらそんなことになるのか気になった。で、訊いてみると、洗濯を手伝っている時に、カゴの中にあった下着をふと手に取ってしまったのだという。
　思いきり平手で３発なぐられたと言っていた。お母さんは、さぞ情けなかったことだろう。
　……とまあ、思いだしていけば、こういう事例はキリがないが、筆者はなにも彼らを揶揄しているわけではない。ただ、そのドーブツぶりを笑っているだけのことである。
　やっぱりバカにしてるんじゃないかって？　でも、面白がらなければこいつらとつき合っていられない、と言えなくもない。
　それに、笑いには、多かれ少なかれ、誰かをおとしめる要素が往々にしてあるものだ。筆者のブログでは、たいていの場合、筆者自身を笑いものにしていることも多いのである。
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　カンニングが女子に多いのは、男子が比較的、点数に無頓着だからだろうか。当然、個人差はあるが、やるにしてもノリが軽い。女子のほうがその場しのぎのプライドが高く、カンニングに悲愴感さえ漂わせている子がいる。
　中学部の生徒でも、それが顕著だ。かりにゴトウさんとしておく。その友だちがサトウさんとカトウさん。ともに２年生の女子で、仮名である。
　カトウは、人なつこくて、授業後によく話しかけてくる子だったが、この時はサトウといっしょに真面目な顔で、ゴトウさんが漢字テストでカンニングしてる、と通報してきた。
「今度、見てて。先生が通った後、机の中の答をのぞいてるから」
　それに気づいて注意して欲しいという。事実、テスト中の机間巡視で、ゴトウさんのそばを通りすぎた時に、横目で確認すると、こっそり答を見ている。席順は、カトウとサトウが二人がけのとなり同士で、そのすぐ後ろにゴトウが一人で座っていた。
　ちなみに、カトウ本人の点数は悲惨である。
「カトウ、なんだよ、この点数」
　筆者が答案を返したら、カトウは、「でもぉ」と言ってサトウと顔を見合わせ、声をそろえて「ズルするよりいいよねぇ～」と、筆者にではなく、二人して後ろのゴトウをふり返って言ったのだ。ゴトウは、ただ硬くなって下を向いていた。
　怖い。怖いぞ、カトウにサトウ。あらかじめ示し合わせていたはずもないのに、なぜこんな演出ができるのだ。
　それに、女の子というのはわからない。筆者からすると、それまでは仲よし３人組といった感があったのに、これだけのことで、もう分裂している。３という数がまた問題で、何かあると、すぐ２対１になり、その２の側に回ることに躍起になっているようである。
　カトウは「みんなの前で、ゴトウさんをきびしく叱って」と言う。仲間のカンニングにこれほど腹を立てるというのは、「わたしはしていないのに、ズルい」という気持ちがあるようだ。
　でも、カトウさん。君はなぜうしろの席の子がカンニングしていることに気づいたのかな、とは訊かないことにした。
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　で、火事の現場で燃えさかる炎を見あげ、ひと様の家が焼けるさまを存分に堪能し、帰ろうとしてふと気づいたら、手に箸と茶碗を持ったままだったという（アホだ）。そして、茶碗の中に入っていたご飯が、駆けているうちにどこかに落として、なくなっていたという（ますますアホだ）。
　ここまで熱中すると異常だが、現実ではなく、フィクションの中では……そして生理的もしくは倫理的に受けつけないような悲惨で理不尽なものでなければ、筆者も、その愚かしさを面白いと思う。
　たとえば、講談社のマンガ雑誌『モーニング』に連載されていた『ナニワ金融道』。
　スマップの中居正広主演のドラマも面白かったが、原作のマンガが非常に個性的である。トーンをまるで使わず、味わいのある線で、びっしりと精緻に描かれている。
　セリフがやたらに多いのも特徴だ。登場人物たちのアングルは単調で、真横か、真正面からのバストアップでとらえた構図がほとんどだが、それでも飽きがこないのは、内容が読み応えバツグンだからである。
　筆者は文庫で全巻購入し、一日一話ずつ読んでいって、今年のはじめに読み終えた。
　なにが面白いかって、登場人物たちのダメっぷりである。
　主人公の灰原は、はじめ大阪の小さな印刷所に勤務していたが、そこが経営不振で倒産し、がらりと畑を変えて、帝国金融という街金に就職する。そしてみずからの「金融道」を目指しながら、さまざまな人々の人生模様に接していくという物語である。
　灰原は、根はしたたかだが、基本的にまじめな性格の青年であり、ヤクザっぽい風貌の先輩社員が多い職場の中でも、ごく普通の外見をしている。
　大阪が舞台だから、登場人物たちはみんな大阪弁をしゃべっているが、灰原だけは標準語である。このあたりは、作者の計算が働いていて、実にうまいと思う。
　作者の青木雄二氏は、たたき上げというか、社会的な修羅場をくぐっている人物だろう。
　街金の社員である灰原は、完全な傍観者の立場で、金に泣く人々の滑稽なくらいに愚かしく、そして哀しい姿を眺めていく。傍観者という点では、読者も同じである。
　しかし、筆者だって金融の知識があるわけじゃない。欲に取りつかれて墜ちてゆく人々の醜態は、一歩まちがえていれば自分も……という、ぎりぎりの姿でもあるのだ。
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　写真も残っているが、顔だちからして神々しい。また、植芝翁、銃弾をかわしたというエピソードもある。などと聞けば、大人なら眉に唾をつけてしまいたくなるだろう。
　達人の伝説というものは、針小棒大に伝えられるものである。ことに武器を持った相手を制するというのは、素手の武道を志す者にとっては至高の境地であり、しかもその武器が飛び道具ともなれば、もはや神話の世界といっていい。
　でも、この人なら、もしかしたら本当にできたんじゃないか、とも思える。
　植芝翁が語るところによると、銃を持って対峙した相手が引き金を引く直前、黄金の光が見え、その光をかわせば、直後に自分のいた空間を銃弾が飛んでいくというのだ。
　一方、気配を見せずに撃つ銃の名人もいた。ある時、植芝翁はその名人と向かい合ったが、相手が引き金を引くタイミングが読めず、これはかわせないと言って負けを認めている。
　植芝盛平の墓は、南方熊楠といっしょに、田辺市の古刹・高山寺にある。いつか書いたが、筆者が中学３年の秋、夜中に墓場を探検していた寺である。
　現在、筆者のいとこが、この田辺市に住んでおり、一昨年の夏、「幼い息子に極真空手か合気道を習わせたいんだけど、どっちがいいと思う？」ときかれた。
　極真会館に所属する筆者としては、「そりゃあ、極真でしょ」と答えるべきだったかもしれない。でも、訊いてみるとその合気道の道場は、なんと高山寺の中に、つまりは植芝盛平の菩提を弔うお寺の境内にあるというのだ。
　開祖の霊にすぐ近くで見守られながら修行できる。そんな恵まれた環境がほかにあるだろうか。このときばかりは「そりゃあ、合気道でしょ」と答えてしまった（松井極真じゃないし）。
　ところで、植芝盛平翁が亡くなったのは、１９６９年の４月２６日。
　我々極真会館の門下生にとって、その日付は忘れられるものではない。言わずと知れた大山総裁の命日と同じである。
　ちなみに、大山倍達が若い頃に学んでいた松濤館流の空手をひらいた船越義珍も、１９５７年４月２６日に亡くなっている。偶然としか言いようがないが、武道の大家の命日がこうも重なっているのは、奇妙な暗合というしかない。
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　筆者は、この番組を面白いと思ったことが一度もない。シロウトの歌番組だから、当然、知らない人ばかりが出ており、いわば見知らぬ人たちのカラオケを試聴しているようなものである。出ている人たちはともかく、何の関係もない立場でこれを楽しめるというのがわからないのだ。筆者の両親も、いまだに何がおもしろくて見ているのだろう。
　高校生の時に「こんなもん、公共の電波に乗せて全国放送する価値がない」と言ったら、自局の番組をけなされたと思った父から猛反論を食らった。シロウトが出ることに価値がある、それが売りだ、というわけのわからない理屈である。なんでも視聴者や出演者からの反響がすごいのだという（だから今でも続いているのだろうけど）。
　大河ドラマ『軍師勘兵衛』では、例の叫ぶ演技に辟易した。荒木村重が謀反の疑いをかけられる回だったが、いやもう、涙ながらに叫ぶ叫ぶ。
　先日、国分寺道場生のスガイズムから「ＮＨＫのドラマって、よく叫ぶんだよ」と聞いた時、筆者は「ＮＨＫも叫ぶが、あんたも叫ぶ」と返したものだった。試合を直前に控えていたスガイズムは、かかり稽古やミット稽古で気合いが入るあまり、「うぉーっ」と雄叫びをあげることしきりだったからである。
　さて『軍師勘兵衛』だが、「殿ーッ」「行ったら殺されますぞッ」などと、暑苦しいったらない。実際は、勘兵衛も荒木村重もその家臣たちも、こんな大仰ではなかっただろう。だいたい、現実の世界で、叫ぶ人間がどこにいるというのだ（あ、国分寺道場にいた）。
　叫ぶ演技の他に白けるのは、バラエティー系の番組で、いきなりCMに切り替わることだ。
　たとえば、新婚さんを招いたトーク番組で、出場の新婚夫婦が最後にくじ引きのようなことをすると、その結果をすぐに見せず、急にコマーシャルが入るのである。そして忘れたころに元に戻る。「どうなるんだろう、ドキドキ」と、視聴者の興味を引くためだとしたら逆効果だ。他人のくじ引きの結果などに、誰もそこまで興味をもたないのだから。
　クイズ番組でも、最後の問題が出される直前、ぱっとCMになり、だしぬけに通信販売の社長が現れたので、なにか関係があるのだろうかと思ってしまった。むろん関係などない。
　なんというか、浅はかで、傍若無人な演出だと思った。でも、このような視聴者を馬鹿にした構成は、今に始まったことではないらしい。自分なら二度と見ないんだがな。制作側が続けているということは、クレームもなく、効果が認められているからだろうか。
　……今回はテレビの悪口になってしまった。でも、なんだかんだでテレビを見る時間というのは、くつろげるひと時なのかもしれないな（と、取ってつけたようなフォローで終わる）。
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　その神社には、白馬も祀られている。説明書きを読んでみると、吉宗公の愛馬だったとのこと。『暴れん坊将軍』のオープニングで、富士山をバックに颯爽と白馬をとばしていたのは、あながちビジュアル面での効果だけを狙ったわけでもないらしい。ちなみに、和歌山城の近くの国道沿いにも、やはり馬にまたがり、疾駆している吉宗の銅像が見られる。
　さて、吉宗公といえば目安箱が有名だが、実際はもっと徹底している。
　藩内の動静を探るのに、「隠れ目付」という役職をおき、八十人もの按摩さんを通じて、配下の末端にいたるまで知り尽くしていたというのである。
　按摩は、身分の上下を問わず揉み療治をおこなう。誰だって体をもまれている時は気を許して、いろいろなことを彼らに話してしまう。そうして集めた城下のさまざまな情報をもとに、吉宗は家臣たちの誰と誰が通じていて、またどんな葛藤があるか、町人たちがどんな思いを抱いているかといった、家中の内情の把握に努めていたという。
　また大岡越前守忠相をはじめ、配下にえんりょなく意見具申させていたらしい。ふつうの大名ならイエスマンばかりを身辺に侍らせ、耳の痛い意見など聞くはずもないのに、吉宗はそれが改善につながるなら、柔軟に取り入れていたのだ。合理主義者だったことは間違いない。
「世に、人ほど恐ろしいものはない。貴賤を問わず気を許すことはできない」
　と吉宗は著書の中で述べている。
　家中の人事にしても、人間というものはこういう状況ではどうふるまうか、このようなタイプの人間に重責を負わせるとどういう結果になるか、といったことまでこと細かく記し、大名とは思えぬほどの、鋭く底知れない人間観察眼がうかがえる。
　莫大な借金を抱えて破産に等しかった紀州藩の財政も、吉宗が君主になってから立て直され、五年後には金蔵の木材が折れてしまうほど蓄財するに至ったという。
　武芸好きで有名な吉宗公だが、とにかくエピソードを知るほど、ただの大名ではない、とんでもない頭脳の持ち主だったことがわかる。
　ちなみに、ある年の大学入試の問題で、徳川吉宗の異名を答えさせる設問があったらしい。
　むろん日本史の問題だが、別名（　　　）将軍と呼ばれたか、その（　　　）の中を書きなさいという出題で、正解はもちろん「米将軍」。
　何人かいたんだろうな。「暴れん坊将軍」と書いた受験生が。
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　全裸。一糸まとわぬすっぽんぽん。居酒屋の座敷で脱がされながら、Ａ先輩も形ばかりの抵抗は見せていたが、実際はみずから進んで脱いでいることを筆者は見逃さなかった。
　ちょっとトイレに立って戻ってくると、座敷の入口に、くしゃくしゃのパンツがのれんのようにかかっている。それが頭に当たらないように気をつけてくぐり抜け、ふと見ると、Ａ先輩は露出した肌のいたるところにマジックで落書きされているところだった。
　さらには、尿道にマスタードを擦り込まれ、エビぞりになって悶絶し、あろうことかビールのピッチャーにその部分をひたす、という絶対にやってはいけない所業にまでおよんでいた。悪ノリもたいがいにしてほしいものである。
　断っておくと、これはイジメではなかった。Ａ先輩は、明らかに喜んでいたのだから。
　果ては放置され、生まれたままの姿で居酒屋の片隅に転がっているのだから、店にとっても他の客にとってもたまったものではない。
　そこまで弾ける勇気のない筆者は、やや離れた位置からその一部始終を傍観しつつ、今後なにがあってもこの店でビールをピッチャーで注文しないでおこうと心に誓ったものだった。
　もうひとつ例を挙げる。某海外支部のＢ先生の例である。
　この先生の場合は、ある意味、もっと底が知れない。泥酔して乱れて脱ぐのではなく、あまり酒が回っていなくても冷静にそれをやってのけるのである。
　筆者はカラオケに同伴したことがあるが、Ｂ先生と、同じ海外支部のＣ師範は、そろって歌いながらズボンをおろし、下半身をむき出しにしていた。それも無表情で、とくになんらかのリアクションをこちらに期待した様子もないので、理由がわからない。理由などないのだ。
　大柄な白人男性が二人して下半身まる出しで歌っているものだから、飲み物を運んできた店員が絶句し、ドン引きしていたのを今でも覚えている。
　Ｂ先生は、その海外支部の重量級チャンピオンになった人で、当然ながら空手は強く、稽古熱心で、筆者は尊敬しているのだが、このように俗世間を超越したところもあるのだ。
　以上、ともに１０年以上も前のことだから、もう時効だろうと思って書いた。
　念のために強調しておくと、現在の国分寺道場の飲み会は、みんな品行方正である。上記のようなことは決して行われていないので、誤解のなきよう。新しく入門された方も安心して参加していただきたい。
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　いや、人のことを笑えない。筆者だって、酔って記憶がなくなった経験ぐらいある。
　１５年ほど前のことだが、酔いつぶれてマンションに帰り、翌日、出かけようと思ったらカギがなかった。ゆうべ帰っているのだから、どこかにあるはずなのだが、部屋中探しても見つからず、仕方なく施錠せずに家を出ようとすると、ドアの鍵穴につっこんだままになっていた。
　京王線の千歳烏山に住んでいた学生時代、しこたま飲んだ後に、友人と二人で線路の上を歩いた。踏切から線路に入り、それぞれレールの上を、酔った状態でバランスを取って歩いたのだが、もちろん理由などない。
　深夜の３時ごろだったので、電車は通らないから安全だ、と思っていた。そうして千歳烏山の駅まで来て、プラットホームによじのぼり、チェーンのかかった改札口をまたいで出ようとした時、なんと、いま歩いていた線路を電車が通過していったのだ。
　終電もとっくに終わっている時刻である。客を乗せた電車ではなかったが、整備用の黄色い車両などは動いているのだ。ホームにあがった直後だったので、もう少し後だったらと思うと、ひやっとした。 　ほかにも失敗談はあるが、道場のブログで書くには不適切な内容なので、これ以上は自粛しておく。とにかく、お酒が入ると思考力が鈍ってしまうのでコワイ。
　筆者は、ビール、日本酒、泡盛、焼酎、ワイン、カクテル、ウイスキー、なんでも美味しいと思う。度数の強い酒をロックで飲むのがいい。日本酒はもちろん純米で、銘柄は、なかなか手に入らないが、山形の「住吉」などが好きである。
　だが、今年になって飲酒に懲りてしまう出来事があり、それ以来、ぴたりと晩酌をやめてしまった。ごくたまに、外で人と飲むことはあるが、その場合は、気心の知れた相手と語らう時間を求めているのであって、アルコールの摂取が目的でないことはいうまでもない。自宅では、もう飲んでいない。
　好きだった酒に対して、これほど距離を取ったのは初めての経験だ。ジェットコースターとちがって、「もうこりごりだ　また飲もう」とは思わないのである。
　でも、いつまでつづくのやら……。
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　体育館の下にテントを張った。校庭の向こうに巨大な山影が黒々とそびえ立ち、空の色は紫まじりでどす黒く、いかにも恐ろしげな様相。で、仕方ないから寝ることにした。
　寝るしかないではないか。ほかにすることなど、ひとつもないのだから。
　道中、親切な方からいただいた菓子パンを晩飯にしたが、食い終わったところですぐに眠れるものではない。それもそのはずで、時計を見ると、夕方の６時半だった。
　東京にいたときの感覚とまるで違う。空が暗くて、自分以外に誰もいないものだから、夜更けのような錯覚を覚えていたのである。
　電気は通っていないので、なかば手さぐりでトイレに行った。廃校というだけで怖いのに、わずかな明かりだけを頼りに暗い中を進むのは心許なかった。トイレは、意外にも水が流れた。タンクの中に貯まっていたらしい。
　それから筆者は恐怖の一夜を過ごした。なにがあったわけでもない。ただ、テントの外に何者かの気配をはっきりと感じたのである。ビニール一枚へだてて、なにかがいたのだ！
　あれは何だったのだろう。知らない土地の山里に一人きりでいて、風が吹き荒れ、雨がそぼ降り、しかも廃校に泊まるなどというホラーな夜のシチュエーションが見せた錯覚だろうか。
　ひとつ思ったのは、昔の人が妖怪を信じたのは必然だった、ということだ。人がいない場所で、ふと何者かの気配を感じたなら、人以外の存在を認めるしかなくなるのである。
　恐怖におののきながらも旅の疲れでいつしか眠りこみ、翌朝目覚めてみると、空は快晴。校庭の桜がハラハラと舞い、体育館の下に作られた巣へと、ツバメがせわしく行き来している。不気味だった夜の廃校は、一変して、のどかで爽やかな春の朝を迎えていた。
　木造校舎が二棟だけのかわいらしい小学校で、校舎の玄関の上にかけられた時計の針は、とまったまま動かない。校内は、筆者のほかに人影もなく、しんとしている。体育館の下に放置された黒板には、生徒がチョークで落書きしたらしいウサギの絵があった。
　ここに通っていた子どもたちは、どこへ行ったのだろう。過疎化の影響で近隣の学校に併合されたのだと思うが、子どもたちはそれまで通っていた校舎を捨てることになった時、どんな気持ちだったのだろう。
　８時半になっても、誰も登校してこない春の小学校。桜の花びらが、ひとけのない校庭に音もなく舞いつづけていた。廃校はさびしく、どこかもの悲しい。
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　ロングラン上映されているだけあって、すべてに手の込んだすばらしい映画だった。
　ただひとつ、筆者は映画やドラマなどの映像作品において、登場人物の「叫ぶ演技」が嫌いであり、観ると引いてしまうほど苦手なので、お願いだから、そういう安易な演技、ありきたりな演出をしないでくれよ、と思っていたのだが、やはりあった。まあ戦争モノだから、涙ながらに叫ぶシーンはつきものなのだろう。
いやいや、そんな些細なことを抜きにして、この映画はよかった。まず、なんといってもゼロ戦の空中戦シーンが圧巻である。『ハール・ハーバー』など足もとにも及ばない。空戦アクションの最高峰ではないかと思った次第。
　真珠湾攻撃で、米戦艦アリゾナが沈没するシーンも真に迫っていた。ミッドウエイの海戦では、日本の空母〈赤城〉も出てくる。滑走路面の下の桁が高く、右側面に巨大な排気口のついた異形の空母であり、その形を知っている者なら一目で赤城だとわかる。それもかなり精密に再現されていて、それだけに臨場感も迫力も満点なのだ。
　もちろん、ゼロ戦もすばらしい。つくづく美しい戦闘機だと思った。終盤のクライマックスで、米空母タイコンデロガに突撃していく場面などは涙なくして見られない。
　舷側に巨砲をそなえ、おびただしい機銃に守られた巨大空母タイコンデロガからは、雨のように対空砲火の光線が飛んでくる。
　ちなみに来年は終戦から７０周年である。映画のシーンそのものは特殊撮影でも、７０年ほど前にあんな攻撃をかいくぐって特攻していった日本人が実在したのかと思うと、やるせない。
　物語は現代と戦時中のパートに分かれ（原作も同じ）、現代に生きる若者・健太郎が、ゼロ戦のパイロットだった祖父・宮部の人物を調査していくという形で進行するのだが、戦時中のパートで、宮部（岡田准一）が、この日本は将来どんな国になっているのだろう、と語る場面がある。命を賭して日本を守った彼らが、そう思わないわけがないだろう。
　そしてラスト、画面には、現代の日本の繁栄した平和な風景が流れる。祖父の調査を終えた健太郎は、ビル街の上空を一機のゼロ戦が飛びすぎていく幻影を見る。操縦席では宮部が孫に向かって敬礼していた……。
　泣ける……。まだ上映されているようなので、ご覧になる方はお早めに。
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　行きつけの飲み屋があったのだ。筆者も連れていかれたことがあるが、Ｍが頻繁に通っていることは、そこのマスターや他の常連客との会話でわかった。そういった会話を聞きながら、筆者は「Ｍがミュージシャンになることはないな」と思った。
　たまにならともかく、飲み屋の常連になっている暇があるなら、その時間をどうして音楽のために使わないのか。会社からまっすぐ帰って作曲のひとつでもするべきじゃないのか。本気で目指している目標があるなら、どれだけ時間があっても足りないはずなのに。
　飲み屋で「俺はサラリーマンじゃない」とぼやいていたＭは、「俺は極真をやったら強いで」とも得意げに語った。入門はおろか、見学にすら行ったことがないのだから、何を根拠にしているのかはわからなかった。不毛の言葉である。が、こういう人は意外と多いようだ。
　清く正しく美しくすばらしくカッコいい自分、という思いは、きっと蜜の味がするにちがいない。だが、いくら脳内で「会社勤めをしている俺は、世を忍ぶ仮の姿であって、実はミュージシャンなんだ」と思っていても、自分自身はごまかせない。それが本人もわかっているだけに哀れだった。
　もちろん、Ｍはミュージシャンになっていない。今でも会社勤めをしているようだが、その後、自分が何者であるかを認めるに至ったのだろうか。
　受験生の過去問を見ていても、正解した答にだけマルをつけて、まちがえた答にはバツをつけていない子が、たまにいる。「きれいな自分」にバツはふさわしくないのだ。まちがいはまちがいとして潔く認識しないと、弱点を直さないままになってしまうのだが。
　空手だって、まず自分が弱いという事実を認めなければ、その状態から変わりたいという気持ちが起こらない。スタミナがない、パワーがない、体が硬い、といった現実を認めるからこそ、走ったり補強やウエイトをしたりストレッチに時間を割いたりするのである。自分は強い、という幻想に酔っていれば、鍛錬する必要も感じないだろう。
　変化には、時として痛みや苦しみがともなう。あたかも通過儀礼のように。
　化膿した傷口を見るのはつらいし、膿をしぼり出す時は痛い。でも、それに耐えなければ治療はできない。そのためには、まず無惨な傷口を直視する勇気が必要になる。
　認めたくない今の自分を客観的に見つめ、受け入れること。これがきっと、変わるために踏み出す第一歩なのだ（今回は真面目な話で恐縮）。
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「ろくじゅうはち……ろくじゅうきゅう……ななじゅう……ななじゅういち……」
　ぼくは汗をいっぱいかいて、たぶん顔はゆでだこみたいに真っ赤になっていて、がまんできずにお風呂からとびだしたくなる。そして、いつも、
「ダメよ。ちゃんと１００まで数え終わってからでないと」
　ってママに言われるんだ。
「ガマンしなさい」って。
　しっかり温まらなきゃいけないんだって。ママはわざと怒ったような顔で言う。
　ママは、どんな顔をしても、とてもきれいだ。こんな美人のママとぼくを捨てて、どうしてパパは、ほかの女の人とどこかへ行ってしまったんだろう。
「ななじゅうご……ななじゅうろく……ななじゅうなな……」
　パパがいなくなってから、ぼくとママは二人で暮らしている。
　ママは二十六歳で、美人だから、ママのことを好きな男の人は多いみたいだ。たまに、パパじゃない男の人が、うちに来てとまっていく。
　その人は、ママのコイビトで、ママのことが好きなんだって。でも、みんな、ぼくのことは、あまり好きじゃないように思える。ぼくがきらいというより、なんていうか、ママに子どもがいることがイヤみたいなんだ。
「はちじゅうろく……はちじゅうしち……はちじゅうはち……」
　ふう、暑い。ふやけてきそう。ぼくは、あんまりお風呂が好きじゃない。
「きゅうじゅう……きゅうじゅういち……きゅうじゅうに……」
　ママは、パパがいなくてさびしいみたい。結婚したがってる。ぼくに「パパが欲しくない？」って、たまにきくことがあるから。
　新しいパパができるなんて、なんだか不思議な気分だけど、ママがさびしくないなら、ぼくはそれでもいいって思う。
　でも、相手の男の人はどうなんだろう。ママのことが好きでも、子どもがいるっていうことで、いつもママとの仲がこわれて、うちに来なくなってしまう。だからママは、ぼくのこと、じゃまになってきたのかな。
「きゅうじゅうはち……きゅうじゅうきゅう……ひゃく！…………」
　あれ、１００になったのに、まだ出してくれない。ママはぼくを押さえて湯船の底に沈めたままだ。ぼくは、もうとっくに死んでいるのに。
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　当ブログは２年前、江口師範からの提言で始まった。随筆的な文章という以外はすべて筆者の裁量に任せるとのこと。よって、題名も、毎回の分量も、納期も、筆者が勝手に決めた。題名は本家ブログ『師範・指導員の独り言』をもじり、分量はただ単に数えやすい書式を用いただけ。納期を週１にしたのは、ペースをつかみやすいから。
　書くこと自体は負担にならない。それより、提出を忘れないように意識の片隅においておく必要があるので、毎週○曜日に書く、と決めておこうと思った。今では習慣になったけれど、最初のころは忘れてしまわないかという心配があったのだ。
　２週間以上あくようなら、道場への貢献にならないし、新規参入する意味もない。かといって３日に一度ぐらいだと、ネタ探しに苦労する。毎週１回の更新ならわかりやすくていい。
　今まで週１で更新しなかったのは、お盆や引っ越しなどネット環境の不備によるものか、小野先生から年末年始で道場の業務が休みになるという連絡を受けた時だけで、サボったことは一度もなく、この２年間、毎週コンスタントに提出することができた。
　ネタも、だいたい７種類（空手、塾関係、紀州、子ども時代、お遍路、必殺シリーズ、その他身辺雑記）ほどに大別されるようになったが、いささか必殺の割合が高すぎるようである。数えてみたら１０回あった。ということは１０パーセント以上だ。道場のブログなのだからもっと空手の話題を増やすべきかと思った次第である（思っただけかも）。
　はたしてネタはいつまでつづくのだろうか。ゴールが見えないのは心許ないので、２００回をメドに終了したいのだが、どうだろうか。そこまで書いたら十分なのではないだろうか。
　さて、次回は１００回なので、いつもと違うことをしてみたい。と考えてショートストーリーを書くことにした。
　いつもと同じ枚数内でやってみようと思う。毎回の書式が４０字×４０行の原稿用紙４枚分だから、物語としてはめちゃめちゃ短い。あっという間の超掌編である。
　内容は、ジャンルでいうとホラーにする。なぜホラーかというと、怪談の世界には「百物語」と呼ばれるものがあるから、１００という数字にちなんでのことである。
　とはいっても、道場のブログなのであまりえげつない描写は避けるが、一応、ホラー系が苦手な方はお読みにならないことをお勧めしておきます。
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　ちょっと例をあげてみる。上記のとおり筆者は確定申告をしている立場なので、過去に道場でグローブを購入した時、ある先生に領収書が欲しいと言ったら、「いいじゃん、領収書なんて」と返されて絶句した。当時、事務を任されていたその先生は、領収書を切るのがめんどくさかったようなのである。領収書がどこにあるかも知らなかったらしい。
　また、ある世界大会の時、アリーナ席のチケットを購入するとパンフレットがついてくることになっていたのだが、たまたま筆者には渡されなかった。で、担当していた職員の先輩にパンフレットをくださいと言ったら、その人は激しく機嫌を害してしまった。先輩に対して、筆者もそれ以上は言えず、２０００円もするパンフレットを自腹で買うことになった。
　その先輩はのちに道場に寝泊まりするようになり、通路のカーテンで仕切ったところに「住んで」いたのだが、寝ている時に通路を通ると「足音がうるさい」とよく苦情を言っていた。
　この二人に共通するのは、道場の業務が「仕事」であるという認識の甘さである。
　たとえば、一般の社会で物品を購入して領収書を求めた際、「いいじゃん、領収書なんて」などという販売員がいたら、おそらくクビだろう。
　アリーナ席の特典としてつけられたパンフレットにしても、一人にだけ忘れていたら、当然その人は理不尽だと感じるはずだ。もちろん、それを指摘されての逆ギレなど許されない。
　だが、道場では、仕事の相手が知り合いである。それが後輩であった場合、極真の上下関係で無理を通すことができる。人によっては、ここに甘えが生じる。彼らは自分たちが仕事をして、金銭を得ていることを忘れている。報酬を受けとるということは、そこに責任が発生するということだ。一般社会では当たり前のことだが、中には勘違いしてしまう人もいたのだ。
　ちなみに上記の二人は、江口師範にも多大な迷惑をかけており、とっくに道場から去っている。というか、淘汰された。言うまでもないことだが、現在の国分寺道場には、そんな社会性を欠いた先生など一人もいらっしゃらないことは周知の通りである。 　ところで、このブログ『もうひとつの独り言』は、仕事に当たるのだろうか。
　結論から言って、否である。というと、真面目にやっていないように思われそうだが、まず筆者が道場の「職員」ではないというのが、その理由である。クオリティの面からも、お金をいただくほどの文章（内容）になっていないと思う（必殺ネタを平気で書いているし）。
　では、なんなのだ、この『もうひとつの独り言』って。
　１００回も間近に迫ったことだし、次回はそんなネタで書いてみることにする。
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　話数は、たったの全８回。必殺史上の最短記録である。非主水シリーズでもだいたい１３話ぐらいあるのに、２ヶ月以内で打ち切りとなった。『必殺仕事人　激突！』でいったん復活するものの、１５年も続いた必殺シリーズを事実上終わらせた作品といっていい。
　実際、ひどかった。カルタの綾太郎、すたすたの松坊主、早縄の清次の三人が、お七（工藤夕貴）の頼みで「世直し」をするのだが、仕事人Ⅲで秀が「世直しなんていうやつに限ってな、ろくなのがいねえんだ」と言っていたように、コンセプトからしてちがう。必殺の殺し屋たちは、自分たちがやっていることはしょせん人殺しであり、義賊などではないという意識があったが、それが剣劇人にはない。
　クライマックスの殺陣も、衆人環視の中で堂々と刀を振り回して大立ち回りを演じたり、槍で刺したりする。槍などは戦場で使う得物であって、殺し屋の武器ではない。人目を忍ぶ緊張感がまったくないのだ。殺しのテーマも、大衆演劇のように三味線をかき鳴らす気のぬけた曲で、とうてい頼み人の悲しみを背負っているような悲愴感や勇ましさとは無縁である。
　三人はそれぞれ、「寄らば、斬るぞ」、「おととい来やがれ」、「ムフフ、ば～かめ」といった決めゼリフを口にし、最後はなんと大ガマに乗って煙とともに姿を消すのだが、初めて見たときは「こいつらこそ、おととい来やがれ」と思った。
　だが、ファンならば、すべてを許容すべきだろうか。
　必殺には、もともとこういうキワモノ趣味が珍しくなかったのだ。過去のオープニング・ナレーションでは、現代の風景が映されたり、サングラスをかけた宇崎竜童がアップになったりした。作品そのものでも、オカルトに走った『翔べ、必殺うらごろし』や、当時の世相をパロディにした『必殺仕切人』など、ふざけすぎるきらいは、それまでにもまちがいなくあった。
　キワモノ趣味でも、８回で終わって次の作品が始まればよかったのだ。『うらごろし』の時も視聴率が落ちたらしいが、その後、原点回帰として正統派路線に戻した『必殺仕事人』で人気が復活し、全８４回ものヒットを記録することになったのだから。
　でも、やっぱりファンが見放したのだろう。最終回では、殺し担当の三人が、自分たちの技を使わず、過去の作品に登場したキャラクターたちの技に依存するほどだったのである。しかも視聴率稼ぎに中村主水までゲスト出演するという始末だった。
　いや、『剣劇人』ばかりを責めることはできないのかもしれない。
　すでにその前から必殺シリーズは守りに入っていた。殺し屋に美形をそろえ、人気作の焼き直しばかりして、新しい試みに挑もうという前期の気概はなくしていた。もの作りで守りに入れば、観るほうは飽きてしまう。それがシリーズ終焉の最大の理由だったのかもしれない。
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　というやつがいて、びっくりした。何という配慮のなさだろう。大人なら絶対に口にしない言葉を平気で言ってしまうのも、子どもならではのことである。
　話を元に戻す。
　教務といっても、自分らは学校の先生とちがい、受験指導に特化した仕事であり、志望校に合格するというひとつの大きな目標に向かって生徒を導くことが役割である。
　そして、受験が片づいて、みんなの結果に思いを馳せると、ほとんどの子が落ちつくところに落ちついていることに気づく。
　それを「おもしろい」といえば、不謹慎のそしりを免れないだろう。でも本当に、合否を問わず、なるようになっている。その意味で、実におもしろい。
「この子は、こうなるんじゃないか」という予想は、けっこう当たるものである。
　もちろん、勝負はナマモノだから、結果はフタを開けてみなければわからない。受験する前に完全にわかるなら世話はない。大番狂わせもあれば、まさかの逆転ホームランという、うれしい誤算もある。
　でも、そういう本番でのすったもんだ以前に、「受験する前にすでに勝負はついている」と感じることが多々あるのだ。同じ志望校を受験しても、上位クラスの子が不合格になって、偏差値で足りていなかった下位クラスの子が合格するという現象が、毎年のようにある。そして、それが意外ではない。
　本人の様子を見ていると、合格する子も不合格になる子も、そうなるだけの条件をみずから積んでいることがよくわかる。そこから、ものごとの成就につながる普遍的な法則さえ見えてくるような気がするのだ。
　ずっと一生懸命がんばってきた子が合格すると、自分のことのように嬉しくなる。努力が報われて本当に良かったと思い、ときには涙ぐんでしまう。
　筆者は過去に、あるメーカーに勤務していた経験があるが、自社の商品が売れてもとくに嬉しく感じなかったので、営業マンとしての適性は皆無だったといえる。その点では、受験指導は向いているのかもしれない。
　ただし、この仕事、情熱がないとやっていられない。いつまで情熱を持ちつづけられるのだろうかと、最近、ふと思うのである。
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『シャイニング』はホラーだが、主人公の家族は数日間どころか、ホテルが閉鎖される冬期の間、つまり数ヶ月もずっとこもってボイラーの管理などをしながら生活する。
　ホテルの外は吹雪でも、食料はたっぷり貯蔵されているし、時間はふんだんにある。なんとも羨ましいかぎりである。
　親しい誰かといっしょでなくてかまわない。たとえ一人きりでも、筆者は自己完結して時間を消化できる性分なので、ひと冬を世間から隔絶された環境ですごしてみたい。一人になりたい、という気持ちがあるのかもしれない。
　さて、２月８日。ご存知のとおり、全国で観測史上の記録を更新するほどの大雪になり、鉄道や飛行機などの交通も乱れに乱れ、運転見合わせが相次いだ。ＪＲのスキーのポスターではないが、これも『ぜんぶ雪のせいだ』。
　東京の都心部では、積雪２７センチという、４５年ぶりの大雪とか。
　筆者は紀州出身なので、雪自体が珍しい。去年の夏は、観測史上の記録を塗りかえるほどの暑さが話題になったが、今度はとんでもない大雪だ。夏と冬で記録的な現象が続いているのはどうしたことか。
　仕事も休みになったが、さすがにこんな雪の中をかき分けて出かける気にはならない。出かけて、電車が止まって帰れなくなったら困るのだ。
　ちなみに道場のＨＰを見たところ、こんな日でも稽古は行われていたらしい。さすがである。筆者は稽古がある可能性など思いもしなかった。
　これを書いているのは、９日の午後。朝から快晴で、ベランダの手すりにこんもりと盛りあがっていた雪は、昼すぎには溶けきっていた。過ぎてみれば意外と呆気ないものだった。こういうときは雪に人格を認めて「根性なしめ」と思ってしまうから不思議である。
　都知事選の投票日でもある。さて、ひらがなの候補者名を書きに行くとするか。でも足もとが滑りやすい中、「あんよは上手」という感じで出かけるのも面倒になってきて、この際、一票の権利を放棄するか、とも思う。
　と、今回も心に移りゆくよしなしごとをそこはかとなく書きつづっているだけのとりとめのない文章で、なにが言いたいのかわからないと思われる方もいらっしゃるだろうが、別にもともと言いたいことがあって書いているわけではないのである。それじゃ、続かないし。……なんだかんだで今回も規定の分量が埋まっていった。

（追記）東京は今週末も積雪が予想されているそうです。
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　人の興味を引く言葉といえば、市販されている食料品につけられる「おいしい」も、これまた「急増中」である。スーパーなどの食料品売り場を一巡すれば、「おいしい牛乳」とか「おいしい豆腐」とか「おいしいワイン」とか、なんでもかんでも「おいしい」がついた名称でいっぱいだ。事実ならまことにけっこうなことだが、「おいしい」という感想は、本来それを味わった消費者が口にするべき「主観」であって、販売する側が提示する客観的データではない。これも「おいしい」をつければ売り上げがいい、というマーケティングの結果よるものだろう。
　もっとも、そんな例は他にいくらでもある。書店の新書のコーナーでは、『○○はなぜ～なのか』や『○○力』という「型」にはまった題名があふれている。
　古い話だが８０年代のＣＭでは、「デオドラント効果」や「粗挽きネルドリップ方式」や「タウリン１０００ミリグラム配合」といった、素人にはわけのわからない専門用語で、何となく凄いんだぞ、という説得力をもたせる手法が流行した。最初は面白がっていた筆者も、中村雅俊がつぶやく歯磨きの成分「グリチルリチン酸リゾチウム」からは、さすがについていけなくなったが。
　映画の『マトリックス』が話題になった後は、あのアクションを真似した映像が続出し、ＣＭでもドラマでも、対象の周囲をぐるぐるーっとカメラが回って急にとまったり、不必要なまでに速度を変えて撮ったりするのが流行った。筆者は、大河ドラマの『新撰組！』の第一話でその撮り方を観て鼻白み、もう二話からは観なかった。そのあたりから、テレビを観ることがどんどん少なくなっていったように思う。
　こういった「こぞって右へならえ」の現象は、政治家の名前からもうかがえる。国分寺の駅前にも都知事選のポスターが貼られているが、候補者の名前にひらがなの多いこと。
　いつからこうなったのだろう。ひらがなだと目立つし、投票用紙に書きやすい、書きまちがいを防げる、と流布されると、無節操にもいっせいに名前をひらがなに変えてしまう候補者が「急増」していったのだ。
　かつて極端な右よりの国家だった日本は、第二次大戦後、今度は極端なまでに左傾化した。いっせいに雪崩を打ったような変化は、国民性なのだろうか。
　だが、極端は反動を呼ぶ。また国がらみ、おかしな方向へ突き進まないことを祈る。
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　もっとも、会議の場面などは、著者の主観が皆無だったわけではないだろう。だが、それによって場の空気が臨場感をもって伝わり、生々しい迫力を呼び起こしている。完全な客観に徹することは、無味乾燥な資料以外、ほぼ不可能といってよく、可能なかぎり中立な立場で著されているのではないかと思った。
　読んで思ったのは、極真にとって大山倍達は、やはり太陽だったということだ。
　大事を成した人物だから、個性も強ければ自我も強く、アクもあるし、圧力もケタ違いだっただろう。遠くにいれば恵みを授けてくれる存在でも、近づけば圧迫されてしまう。魅力も実力も存在感もカリスマ性もあれば、理不尽な面も合わせ持った人物だったに違いない。
　だからこそ、ただでさえ自我の強い空手家たちをまとめる恒星のような吸引力があった。が、亡くなった瞬間、その強大な引力圏から解放されたように、勝手な行動を起こす人たちが現れた。動機はむろん私欲が中心だが、一人一人に焦点を当ててみると、あながちそれだけとも言い難いものがあるんじゃないか、と読んでいて「行間から」感じた。
　植芝盛平が亡くなった後の合気会がそうだったように、大山総裁ほどのカリスマが亡くなったのだから、少なくとも分裂は宿命的だったと思う。必然といえば怒られそうだが、大人の視点から、きれい事ぬきに世の中を見ていれば、そうなることぐらいはわかる。極真の長という巨大な全権が、一代で組織を築いた帝王から、若き二代目へと（マーロン・ブランドからアル・パチーノへと移ったように）ゆだねられたのだから、何も起こらないはずがないのだ。
　誤解を恐れずに言うと、組織をまとめるというただその一点に特化するなら、民主主義よりも独裁者による政治のほうが合理的ではないかと思う。現実の国家では、その独裁者に問題があるから暴走してしまうのだが。
　でも空手の団体なら、トップに立つ人物が全権をにぎったほうが、多少強引であっても運営はうまくいくはずだ。合議制など論外である。第二次大戦を防げなかった国際連盟の失敗を見るまでもなく、全会一致でことは進まない。リーダーには、世界大会などで、判定への不満から起こるブーイングを、一喝して黙らせるほどの強引さがあってもいい。
　ついでに極真会館という大組織を国家にたとえるなら、内部にいた門下生たちは、大山総裁という帝王がお亡くなりになった時、帝国の崩壊を経験しているようなものである。反乱による国家の分裂と衰退、そして新たな指導者による再生も目の当たりにしている。そこから、人間社会の欲に駆られた権力闘争の縮図さえ俯瞰することができる。
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　さっと庭におりて、少女に竹串を突きつける市松。それを植え込みの陰から、主水が緊張して見守っている。市松は冷徹で、仕事に情をはさまない。殺しを見られたら、たとえ相手が年端のいかぬ少女でも、顔色ひとつ変えずに殺すだろう。視聴者にそう思わせるだけの市松のキャラクターが、それまでのシーンで造形されている。
　でも、ほんとに殺してしまうのか？
　多くの視聴者がテレビの前でそう思い、固唾を呑んだことだろう。
　血に染まった竹串を突きつけられた少女は、しかし無反応だった。おびえた様子もなく、探るように手をさしだして市松の体をさわると、こう言うのである。
「おじちゃん、舟まで連れてって」
　少女は盲目だったのだ。それを確認したとき、市松はクールな表情から一変して笑顔を見せる。そして手の中で、キィンと竹串をへし折るのである。
　同時に、こっそり見ていた主水も、ホッとした表情を浮かべる。緊張→安堵という、この主水の心理描写は、視聴者のそれとリンクさせていて、実にうまい演出だと思う。
　市松は、実は子ども好きで、第１０話では仲間がとめるのも聞かず、みなしごの少年を引き取って育てようとする。だが少年は、市松の殺しの練習をひそかに見ており、自分も真似をして竹串でクモを刺し殺す。それを物陰から見てしまった市松は、少年を引き取ることをあきらめる。まっとうな幸福を得られない殺し屋の業を描いた、哀愁の漂うラストである。
　最終回『一筆啓上、崩壊が見えた』でも、市松は最後に笑顔を見せる。
　佐兵衛一味という巨悪を敵に回し、仲間のおこう（中村玉緒）が捕縛され、市松の裏稼業がばれてしまう。市松や印玄がおこうを助け出そうとしても、役人である中村主水はひたすら保身に努め、動こうとしない。市松を疑い、場合によっては口を割られる前に抹殺することさえ考えている。「八丁堀（主水）ってのは、そういう男だ」と、市松も主水を信用していない。
　終盤、市松は逃亡者となって江戸から去っていく。その前の別れぎわに、主水は、握りめしをおさめた竹皮の包みを市松に渡している。無事に追っ手からのがれ、逃亡先で包みを解く市松。握りめしを噛むと、カチリと音がする。あわててそれを割ってみた市松は、中に一両小判が入っているのを見て、ニヤリと笑う。
　仲間だが、ベタベタしていない。信用しきっているわけではないが、認めている。このあたりのバランスが絶妙で、江戸時代に生きる殺し屋たちの関係を見事に描いている。
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　本作の魅力の大半は、市松という仕置屋（殺し屋）の存在に尽きるだろう。というと、いささか乱暴すぎる断定かもしれないが、本作をご存じの方なら同意していただけるのではないだろうか。
　念仏の鉄や半兵衛についても同じようなことを書いたが、そう考えると、必殺シリーズの魅力というのは、キャラクターの個性が多くを占めていると言えなくもない。
　さて、市松。必殺史上に燦然と名を残すこの名キャラクターを演じるのは、沖雅也である。
　かつて『必殺仕置人』で、棺桶の錠（じょう）という役に扮した沖雅也だが、琉球出身の熱血漢で空手まで使う錠とはちがい、この市松はどこまでもクールで、沈着冷静である。
　江戸郊外の竹林に囲まれた一軒家に住んでいて、武器は竹串。竹を削って、ぴんぴんに尖らせた先で、標的である悪人の延髄を一突きにする。
　必殺シリーズにおいて、延髄を刺す技は珍しいものではない。第一作の『必殺仕掛人』の針医者・梅安（緒方拳）からして、仕掛針の一撃で急所を刺して仕留める。
　だが、シリーズの中でも屈指の「痛そうな武器」は、この市松の竹串であろう。『必殺仕舞人』の女殺し屋・板東京山（京マチ子）の長かんざしも痛そうだが、刺す金属部分の幅は一定である。それに比べて竹串は、先っぽが鋭く尖り、柄に近いほど太くなっている。よって、必殺特有の、刺さるシーンの拡大撮影では、ズブズブッと肉に入っていくのが生々しく、またその時の効果音も秀逸なのだ。
　殺し方も華麗にしてクールである。仕掛人・梅安や、仕事人・秀（三田村邦彦）のような、跳んだり蹴ったりする派手なアクションはなく、服装も普通の着流しなのだが、巧みなカメラアングルとコマさばきの演出によって、いつ後ろに回ったんだ、と思わせるような底知れない殺しを披露する。
　一方で、印玄（新克利）の殺し技はなんとかならないだろうかと思う。悪者を、わざわざ屋根の上まであげて、突き落とすのである。悪者は「やめてとめてやめてとめてやめてとめて」などと言いつつ、みずから屋根瓦の上を駆けおりて落下死するのだから、ギャグのようなものだ。市松の殺しがあざやかなだけに、鼻白んでしまう。
　ちなみに、『仕置屋』の放映中、仕置屋たちがアジトにしている風呂屋のセットの残り火が原因で火事になり、撮影所の第三ステージが全焼してしまったらしい。それは新聞にも掲載されたが、見出しが「火事、やめてとめて」だったという。
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　伊勢エビも、一人に一匹ある。それでも百貨店などに行けば、ここの３倍から５倍の金額で売られているのだから、お買い得であり、４時起きで買いに行くのもそのためである。
　筆者は、この朝市の空気が好きだ。活気がある。裸電球がゆれる下で、近海でとれた魚介類は、水あげされたばかりのやつもあって、つやつやしている。
　市場の人たちが売ることに躍起になっていないのは、結局は完売するからだ。それほど需要がある。しかし、４時ごろにもう始まっているということは、何時に寝て何時に起きているのだろうか、と思う。中には、手伝っている小学生もいて感心する。
　アワビなどは、生きたまま焼いて食べたいので、元日まで生かしておきたいと言うと、親切なことに、アワビの発砲スチロール箱に海水を入れて、店で使っていたブクブクとあぶくの出る装置を（無料で）つけてくれた。
　それにしても、新鮮な食材というのはいいものだ。モンゴウイカなど、皮をはごうとしても、なかなか剥がれない。スーパーで売られているようなものは簡単に剥がれるが、和歌山の近海でとれたばかりのやつなので、容易にむけず、一苦労する。力仕事といっていい。それに驚くなかれ、吸盤がまだ生きていて、手にピタピタくっつくのである。
　大きなカキも生きたまま焼いて食ったが、味つけしなくても、海水で絶妙の塩味がきいていて、汁まで美味しかった。幻の魚といわれる稀少なクエの鍋は、魚や野菜や豆腐のまじった残り汁でつくる仕上げの雑炊まで、すばらしく美味である。
　また和歌山の名物、知る人ぞ知る金山寺味噌も見つけて、久しぶりに賞味した。
　味噌といっても、味噌汁にするものではなく、これは「おかず味噌」なのである。
　だから、ご飯といっしょに食べる。地元では、ちりめんじゃこをくっつけて食べるのが基本だ。むろん添加物などは使っておらず、栄養満点。甘くて不思議な味だが、おかずだけでなく、酒の肴にもなる。キュウリでもレタスでも、とにかくあらゆる野菜と相性が合うので、お子様はおかずに、お酒の好きな方は肴として召しあがれる。
　さあ、美味いものを食べて栄養補給した、と思いつつ３日の朝に実家をたった。
　東京に戻ったら、また仕事が忙しくなる。新大阪に着くと…………なに、有楽町で火災？
　新幹線が止まっていた。
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