2024/3/29
「ダンナさん、失語症と格闘する」
江口美幸です。
おかげ様で、うちのダンナさんの失語症も、だいぶ良くなってきました。100%元通りではないですが、日常生活でのやり取りは差し障り無いほどに回復しました。
脳梗塞から仕事への復帰は、ダンナさんはとても恵まれていたと思います。失語症になった人は、仕事を続けることがとても困難になります。本当の単純作業でない限り、どんな仕事でも、言葉を使わなければなりませんからね。
しかしダンナさん、皆さんが辛抱強く、ダンナさんの言葉のたどたどしさを見守ってくれたおかげで、仕事にすぐに復帰し、続けていくことができました。
仕事という、否が応でも言葉を出さなければいけない場が毎日あったことで、言葉の回復がとても早かったと思います。
何度も言いますが、皆さんには本当に感謝しています。
脳って本当に、急に変な現象が起こるというか…以前、病院のリハビリ科に入院中、まだ全然言葉が出ないのに急に春風亭小朝のことを「金髪豚野郎」とスラリと言えたように、何か、得意分野と苦手分野があります。苦手なのは人の名前と数字。時間は要注意です。6のつもりで9を言ってしまったりします。我が子の名前も、毎日、上の子と下の子の名前を一回は取り違えています。
名前も、間違えやすいもの、例えば「ひざ」と「ひじ」は、未だに良く間違えます。ピザピザピザ…のクイズを毎回思い出す…。
退院してすぐのある日、金原先生の整体の最中、先生が身体の部位の名前のクイズでリハビリしようと思ったらしく、ダンナさんの腕を揉みながら、
「師範、この部分の名前は何ですか?」
と訊きました。正確はもちろん、「手」とか「腕」です。するとダンナさん、するりと
「上腕二頭筋」
と言ったので、金原先生も笑ってしまって
「師範、何でそれはスッと出るんですか!」
と言って、
「じゃ、ここは?」
と肩を触りました。正解はもちろん肩ですが、またも、ダンナさんはするりと
「三角筋」
「お、おお!」
「えっ、間違って、ます、か?」
「いえ、合ってます!いいんですけど」
「じゃ、ここは?」
と首あたりを触りました。さすがにここは筋肉は言えまい…と考えたらしいのですが、ダンナさんがさっと言ったのは
「棘上筋(きょくじょうきん)と、棘下筋(きょくかきん)」
金原先生はゲラゲラと笑い
「師範、すごいですねえ!普通の人でも、棘上筋は言えないですよ」
と言って
「首って言えなくても、筋肉の名前はスッと出るんだな…」
と不思議がっていました。
あと、最後に見たものの言葉が残るというか、例えば、人の名前を呼ぶときに、見てたものの名前で呼んでしまう時がありました。
私は、台所にいたダンナさんに、普通に「大根ー」と呼ばれたことがあり、娘は「ねー、里芋」と言われたことがありました。
わかったことは、野菜の名前は嫌だ、ということです。私もムッとしたし、娘は「はあ!?」とキレながら返事してました。
失語症ってわかっているのに、野菜の名前で呼ばれるのは不愉快千万。
後は、イタリアの食材がかなり難易度が高いです。
ペペロンチーノ→「ぺっ…ぱっ…ぺっぽ…」言えなくて苦悩するダンナさん。
モッツァレラチーズ→「まっ…たっ…もっ…」
確かにこれは難しそうだ!おじいちゃんでも言えない人いる!がんばれダンナさん!
皆さん、変わらず見守ってあげてください。ではまた!