2023/3/7
「ダンナさん脳梗塞で倒れる・最終回」


江口美幸です。
ダンナさんが入院中、本当にたくさんの方々が私達を助けてくれました。

道場生の方達だけでなく、加圧トレーニングのお客さんも、
「先生、疲れてたら遠慮なく休みにしてね」
と皆さん言ってくれて、空手の指導でトレーニング時間の変更を頼んでも快く承諾してくれて、本当に助かりました。
「先生、このお菓子、すごく美味しいの。食べてね」
「先生、このアイスコーヒー、疲れた時に飲むと元気出るんです。私、仕事で疲れた時は、これ飲んでるんです。試してみてください!」
「先生、お風呂掃除できてなくてやばいって言ってたでしょう。これ使ってみて!バルサンみたいにしてお掃除できるんだよ」
皆さん、本当に優しかったです。ありがとうございます。

金原先生は、ダンナさんが入院して10日くらい経った時に私の治療に来てくれて、寝不足でガチガチになっていた私の身体をマッサージしてくれて、
「身体が動くなら神経は必ず元に戻るよ」
「運動性失語症だろ?誰に訊いても、あれは治るって言ってるよ」
「美幸さんだったら、乗り越えられるって。大丈夫だ」
とずっと励ましてくれて、その日の治療費を取らずに帰って行きました。

そしてソンラム先生も、事情を話したら驚いていましたが、いつも真面目な顔を更に真面目にして、
「実は、僕は会長(ダンナさん)のことが一番好きだ。会長は下の人にも優しいし、仕事を一生懸命する。だからこんなことになってとても悲しい。でも会長は強いから、必ず良くなる。絶対に治る。だから不安に思うことはない。不安は身体を悪くする。周りの人が健康でなければ助けられない。目の前のことにだけ、集中して過ごせばいいよ」
と、心に沁みるアドバイスをしてくれました。

ソンラム先生はそれからもずっと私に
「歩く時は歩くことに集中、食べる時は食べることに集中。何もしてない時は、呼吸に集中するんだよ。そしたら、不安は無くなる」
と、ずっと言っていました。
…これは、マインドフルネスというやつですね!
確かに、ダンナさんの失語症が治らなかったらどうしよう?もう仕事が出来なかったらどうしよう?子供の学費が払えなかったらどうしよう?
そのような不安が出てくると焦りで苦しくなりました。
医者が絶対に治ると言っているにも関わらず、です。自分自身の暗い想像が、自らを苦しめてしまうのですね。

先生、マインドフルネス、いわゆる禅の思想を知っているとはなかなかすごい!と思い、
「先生は、それをどこで知ったのですか?自分で考えたの?」
と訊いてみたら、
「タイで有名なお坊さんがいて、よくタイのテレビに出てる。YouTubeでその人の話を聞くのが好き」と言ってました。
YouTubeでお坊さんの説法を聞くのが好きとは、さすが真面目なソンラム先生。


「ラブ・アンド・ピース!」


加圧トレーニングのお客様に、お子さんが0歳の時にご主人が原因不明の心筋梗塞になり、一度心肺停止になって、助かりはしましたが、脳にも身体にも重い障害が残りました。そんな人がいます。
今、奥さんであるその人が大黒柱となって、3人で暮らしているのですが、本当にこの人の苦労に比べたら、私の忙しさなど、何の苦労でもないです。
その人は、ご主人が集中治療室に入っている時、看護師さんに
「これって、家のローンはどうなりますか?」
と思わず訊いたと言っていました。
すごく良く分かります。とにかく、リアルに、どうやって生活してゆくか?しか考えられない、その状態。
その人が色々な物をくれたのですが、日持ちするお惣菜、日持ちするパン、とか、そうそう、これこれ!という、本当に的確なもので、感心してしまいました。

本当の親切って、その人がやらなきゃいけない毎日の、ほんのちょっとのことをやってくれて、絶対にその人の時間を邪魔しない。そういうものなんだな、とつくづく感じました。
それを思うにつけ、道場生の人達には、本当に感謝の一言です。

まだ、全く元通り、というわけではありませんが、やっと生活はある程度落ち着いてきて、今、私はとても幸せです。
前よりも幸せを感じられるようになった、というべきでしょうか。
健康って素晴らしいです。仕事ができることは本当にありがたいことです。
たくさん練習できることは素晴らしい。練習できる身体があることがありがたい。健康で仕事があって練習ができる。なんて幸せなんでしょう。

周りの人にも恵まれた。助けてくれる人達がいた。非常に高いレベルの先生達が素晴らしい技術を教えてくれる。
…なんて素晴らしい人生。
大袈裟かもしれませんが、私は今、毎日そう思っています。

ダンナさんの脳梗塞シリーズ、長くなりましたが、これで一度お終いです。
繰り返しますが、皆さん、本当に本当に、ありがとうございました。