2020/6/28
講談師 神田伯山
押忍。八王子みなみ野道場、多摩境教室指導員の戸谷です。
コロナウイルスもまだ落ち着かない状況が続きますが、各業界も営業を再開し、学校も平常授業に戻りつつあります。
これからは手近なところから生活を改善し、ウイルス拡大をコントロールしつつ、いかに日常生活を取り戻していけるかが大事ですね。
今回のウイルス問題が厄介なのは、ウイルス自体の実害ももちろんですが、感染防止を巡る考え方が人それぞれで差が激しく、それによる言い争いや侮蔑が横行してしまっていることです。
「自分は不安に感じていても科学的・実情的に低リスクなものは落ち着いて許容する」
「自分が大丈夫だと思っていても人が気にすることには配慮をする」
「自分と違うスタンスの人がいたときにケンカ腰にならずうまく接する」
今後こういったバランスを心がけたいと思っています。
さて、今回は私が好きな人物を取り上げたいと思います。
講談師の六代目神田伯山さんです。
最近はテレビにもよく出演されているので、ご存じの方も多いのではないでしょうか。
講談師というのは、非常にざっくり言えば、落語のように高座で座布団に座りお客さんに何かしらの物語を話す、という職業です。
落語と違うのは、歴史上実在した人物を取り扱い、自身は物語の語り部として三人称視点で話を展開していくところ、らしいです。何しろ私もよくわかっていません。
私が神田伯山さんを知ったのは3年ほど前に始まったラジオ番組が切っ掛けでした。
当時は「伯山」を襲名する前、神田松之丞という名前で、『神田松之丞 問わず語りの松之丞』という、フリートークのみのラジオ番組がスタートしました。(現在のタイトルは『問わず語りの神田伯山』)
私はまず「講談師」という職業自体を知りませんでしたし、当然松之丞さんのことも全く知りません。松之丞さん自身も番組で自分のことを度々「無名なやつ」と言っていました。
しかし、番組を聴いてみるとこれがとにかく面白い。
偏屈なことばかりを言っているのですが、寄席芸人業界のエピソード、奥さんとのエピソード、子供の頃の話、講談行脚、有名人の悪口、全てがネタとしてきちんと面白く仕上がっていました。
人の悪口が面白い、というのもいかがなものかとは思うのですが、伯山(松之丞)さんの悪口はむしろその人の良さが引き立つものが多いように感じます。
例えば、何か不手際を起こしてバッシングされている有名人がいたとして、そのバッシングされている部分はネタにしつつ、その人の人格や本業での実績に関しては否定しない(必ずしも、ですが)。
むしろ「世間的にはこう言われているけど、この人のこういうところは素晴らしいよね」と認めていくことで、その話題にされた人が本質的には救われていくようなところがあります。
現在、その持ち前の武器である悪口が無軌道にならないように番組の方向性を修正している真っ最中なのですが、元々語り部としての地力があるので、この先番組がどのような形になってもより面白くなっていくと信じています。
正直、人によって好き嫌いがとても大きく分かれる人で、ラジオやテレビでのシニカルなトークに不快感を覚える方もいらっしゃるかと思います。
(ちなみにタレントのダレノガレ明美さんや嵐の松本潤さん、スタジオジブリの鈴木敏夫さんは伯山さんのファンのようです。)
しかし、本業である講談に関して言えば、「100年に一人の天才」という異名を持つほどで、聴けば誰もが惚れてしまう腕前です。
私は講談に関する知識が全くないので彼の芸が相対的にどれほどすごいのかわかりませんが、一席聴いてみたときにこんなにすごい文化があったのかと衝撃を受けたのは事実です。
YouTubeに『神田伯山ティービィー』という公式チャンネルもありますので是非一度ご覧になってほしいです。
最後にその神田伯山ティービィーから、伯山さんの得意ネタである『中村仲蔵』のリンクを貼らせていただきます。
【講談】神田伯山「中村仲蔵」in 浅草演芸ホール(2020年2月21日口演)
https://www.youtube.com/watch?v=xpV1xIcg9As