2020/4/8
青パパイヤでソムタム作り


江口美幸です。

皆様、タイの国民食「ソムタム」をご存知でしょうか?わかりやすく言うと「青パパイヤを千切りにして、海鮮と調味料で和えたもの」です。タイ料理店では「青パパイヤのサラダ」とメニューに書いてあるかもしれません。

この青パパイヤ、沖縄では、よくチャンプルにして食べるので売ってるみたいですが、本州ではついぞ見かけることがない野菜でした。
しかし先日、デパートの八百屋さんをふと覗くと、青パパイヤが売っていました!おお、置くようになったのかー!
しかも1つ198円で安い。嬉しい!思わず3つ買ってしまいました。1つは自分用、2つはソンラム先生用です。



先生にあげたら、「日本で売ってるなんて」と、満面の笑みでとても嬉しそうでした。そんなに喜んでくれて、私も嬉しい。
すると先生がふと
「ソムタムを作るときの、臼は持ってるの?」
と私にききました。ソムタムは、伝統的なタイの臼「クロック」に入れて、香辛料とかナッツとかと混ぜて、トントンと杵でついて作ります。

「いえ、持ってません。日本じゃ売ってないですから。だから、ビニール袋に入れて、揉み込んで作りました」
と答えると、先生は厳しい顔で
「そんなんじゃダメだよ。ソムタムは、臼を使わなきゃ。よし、今度買ってくる」
と、真面目な顔で言いました。
「えー!いいですよ先生、ビニール袋でも充分美味しいですよ」
「いや、味が全然違う!」
「本当に?じゃあ…ありがとうございます」
私がそう言うと、先生は深く頷きました。

その2週間後くらいに、先生がとても大きな紙袋を下げて来ました。
「はい、これ、ソムタムの臼と杵」
タイに帰った時にお土産で買ってきてくれると勝手に思っていた私はびっくりして、
「えー!日本で売ってるんですか?どこで買いましたか?」
「新宿。大きいサイズのしかなかった」
「わーすごい、確かに大きい!初めて見ました。綺麗なものなんですね」
臼は立派で重くて茶色。杵は木で出来ていて、少し模様も入っていて、とても素敵です。



先生に丁重にお礼を言いましたが、その日の練習のミットの合間にも
「あのね、杵で突くリズムは、早すぎちゃダメだよ。トントンじゃなくて、トンッ、トンッ、のリズムでね。腕の動作は少し大きめに」
「こうですか?」「いや、こう」
…真剣に教えてくれるソンラム先生。ムエタイ教えてくれる時より、はるかに真剣でした。
私達が、腕を振り回して一生懸命言っているのを、周りの人は蹴りの大事なコツを教えてもらっているのだと多分思っていて、真面目なハイバラさんとかがじっと見ていますが…違うんです、ソムタムの作り方のコツなんです。

青パパイヤを千切りにするのが私は手間取ってしまうので、
「切り方が難しいんですよね」
と言うと、先生は、うん、そうか、というように難しい顔をしていましたが、次の日に、先生から何かを添付したメールが来たので、見てみると、タイの料理番組の動画で「美味しいソムタムの作り方」でした。
観てみると、料理研究家らしいタイ人の女性が
「サワディーカ皆様。今日はソムタムを作りたいと思います。材料を揃えまして、はじめに青パパイヤを切ります、このように」
と言って、素晴らしく速く、優雅に…そう、20年やっているトンカツ屋さんがキャベツを切るように。30年やっている中華料理屋さんが刀削麺の麺を削るように、青パパイヤをシュパパパと切り始めました。
…いや、先生、これが難しいんですよ!
困ったなと思い、先生に
「送ってくれてありがとうございます。とても勉強になりました。でも、あのようには切れません」
と返信しました。

するとまた次の稽古の時、練習の合間に先生が自分のスマホを持って来て「ほら」と私に画像を見せてくれました。
そこには、先生の手が、皮むき器、いわゆる普通のピーラーを持っていて、青パパイヤに当てています。
次の写真は、半ばまで青パパイヤを剥いていて、その次の写真では、一削ぎ、剥き終わった写真でした。そう、パラパラ漫画的な感じ。

「あーっ、そうか、これ使えばいいんですね!」
「これ持ってる?」
「持ってます!なるほどー」
その時も、私達が携帯を見て、私がなるほど的に大きく頷いているのを道場生の方が何人か見ていて、先生が蹴りの動画か何かを私だけに見せてくれて、説明をしてくれている、羨ましい…という表情をしていたのですが…違うんですよ…見ていたのは青パパイヤの写真なんです。
「ところで、これ(皮むき器)って、タイ語で何て言うのですか」
「パパイヤ剥き器」
「えっ、やっぱりタイだと、そう言うんですね!文化を感じます。なんか感動しました!」
タイでは、皮むき器はパパイヤを剥く為にある道具だってことですよ。名前が付くくらいですもん。

やはり、言葉はその国の文化を表します。タイでは、日本で言うところの「つかみ合いの喧嘩」を「蹴り合いの喧嘩」って言うの、知ってました?やっぱりムエタイの国!
歴史と文化を感じて私が目をキラキラさせて聞いているのを見て、ムエタイの極意を教わっていると思っている周りの人達。何度も言いますが…違うんですよ…極意は極意でもタイ料理のね…。

ここで少し我にかえります。
…そもそも私は、ソンラム先生がうちの道場に来て、この人天才だ、と思って、是非とも色々教えて欲しいと思ったのに、なーんにも喋らない先生の心(別名、鉄の扉)を開く為、タイ語を習いタイ料理の話をして、少しづつ先生の心の鉄の扉を開き、おかげで最近やっと先生が色々教えくれるようになり、すっかりタイ料理も得意になって…って、違う違う!
肝心の、蹴りの技術が!突きがー!それがあまり進歩していないのに、パパイヤの剥き方は習得したよ!

なんか私、目指す方向が少し違う感じがするんですが。
先生に蹴りの質問をすると、一応教えてはくれるけど、途中で、
「うん、とにかく練習だよ。少しづつだよ。頑張って」
で終わってしまうけど、タイ料理については、すごい情熱を持って最後まで教えてくれるんですが。

将来、先生がタイに帰る時に、お別れの時に私が涙ながらに
「ありがとうございます先生。おかげで私、グリーンカレーもラープもヤムウンセンも作れるようになりました」
と…いやいや、そんなことになったら、違う涙が出てきちゃう。いけない。これはいけない。
タイ料理も大好きだし上手く作れるのはとても嬉しいけど、それに劣らず練習も頑張らなければ!と、焦りながら強く思った私なのでした。

・・・・・

できました、ソムタム。とても体にいいんです。


……練習、頑張ります。


*補足
…こんな時期ではありますが、あえて、私のいつも通りのブログを書かせていただきました。
皆さんがそれぞれ今、大変な状況で毎日過ごしていることと思います。
前回の小澤さんのブログにもあったように、私達は次々と起こる出来事に対して、冷静に対処し、最善の努力をしていきたいと思っております。

願いを込めて。