2019/6/21
『少年部の愉快な仲間たち その4』
国分寺道場の江口です!暑くなってきましたが暑い時季になると思い出す話を紹介します。
『好きな飲み物』
かれこれ14〜15年前の話。道場で自主トレーニングを終えた頃、少年部の稽古時間が近づいてきて小学1年生のS君がやって来た。私がペットボトルの水をラッパ飲みしているのを見て「師範、それ美味しいの?」
「美味しいよ!練習後の水ほど美味しい飲み物はないんだよ。」
「ふ〜ん。そうなんだ。」
「Sは1番好きな飲み物は何?」
「プールの水!」
「イヤイヤS、プールの水は飲み物じゃないだろ?」
「でも美味しいよ!今日の体育もプールだったから飲んだ。」
……マジか?! Sよ、お前ホントに飲んでんのか?
「どんな味がするんだ?」
「甘くて美味しい。」
Sよ、お前の学校のプールの水は特別なのか!いや、公立小学校でそんな訳はないぞ。お前の味覚はどうなってんだ!
「いいかS、プールの水には塩素っていう消毒薬が入ってるんだぞ、それに虫もいるかも知れないからもう飲んじゃダメだぞ!」
「虫は避けてるから大丈夫!」
「目に見えないバイ菌がいるかも知れないんだぞ!とにかくもう飲むな!」
「え〜、オ〜ス」とても残念そうなS君だった。
次の週の稽古の前に確認のため尋ねてみた。
「S、もうプールの水飲んでないだろうな?」
「飲んじゃった…、ノド乾いてたから…」
「お腹痛くなっちゃうぞ!もう飲むな!」
しかし次の時もまた次の時も尋ねると
「飲んじゃった…だって美味しいんだもん!」
困ったもんだ。どうすれば良いのだろう?
「とにかくプールの水は飲み物じゃないだろ!ホントにもう飲んじゃダメ!」
「オ〜ス」と悲しそうなS君だった。
そして次の稽古の時恐る恐る聞いてみた。
「おい、S、プールの水まだ飲んでるのか?」
「ううん、もう飲んでない。飲むのやめた。」
「そうか!エライぞ!(ホントは別にエライとか褒められる事ではないが) でもあんなに好きだったのによく飲むのやめられたな?」
「お母さんに言ったら『プールの中で誰かオシッコしてるかも知れないよ!』って言われたから!』
さすがお母さん、そう説明すれば良かったんですね!
さて、そんなS君もずっと空手の稽古を続けて中学2年で黒帯を取得して現在は社会人として、一児の父親として忙しい合間を縫って稽古に励んでおります!今でも時々「S、お前子供の頃、好きな飲み物プールの水って言ってたよな!」と言うとバツが悪そうに
「オ〜ス、でも師範よく覚えてますね。」
と笑っているがあんな衝撃的な事、忘れられる訳ないだろ!と思いながら彼の子供(私にとって孫のようなものですが)に彼の幼少期の味覚が遺伝しないことを願わずにはいられないのでした!
以上暑い時季になると思い出す話でした。