2019/2/19
「ファンって…」


江口美幸です。少し前の話なんですが、金原先生が私にマイク・タイソンの自伝を貸してくれたことがありました。

金原先生はマイク・タイソンの大ファンです。昔「松本紳助」というテレビの深夜番組で「有名人の望みを叶えてあげよう」というコーナーに応募して「マイク・タイソンと試合を組んで欲しい」という先生のハガキが読まれ、松っちゃんに「あっ、リングスの金原選手ですね。僕、結構ファンなんですよ」と言われて嬉しかったと言ってました。
でも結局タイソンはそれからすぐに刑務所に入ってしまい日本はおろか外出することさえできなくなったので、その夢は叶わなかったのですが。

そんなマイク・タイソンの大ファンだということを知っている、先生の大ファンが(ややこしい!)、先生にタイソンの自伝を送ってくれて、先生は読み終わって私に貸してくれました。

分厚い本でしたが、先生が「面白かったよ」と言ったので、つい、貸してくださいと言ってしまったのですが…。
少し読み出して、ああ…これは、じっくりと読む本ではないな、と思ったので、私の特技である「速読とまではいかなくても、かなりの速度で読むことができます」の能力で、仕事の合間に3日ほどで読み終えました。

先生に「ありがとうこざいました」と返したら「速いね!」と先生は少し驚き「どうだった?」ときかれたので、
「いや、その…貧さを解決するのはお金じゃない、教育だ、って言葉は、真実だなと思いました」「えっ、どういう意味?タイソンだよ」
「いや、だから、タイソンさん、馬鹿だなぁって」
「ええっ、タイソンだよ!」
「漫画だったら、読者が『タイソン、そいつはやめろ〜』って呟く感じです」
「いいじゃん、タイソンだからさ」
「…いや、先生、さっきから、タイソンだから、の一言しかおっしゃってませんけど」
「タイソンなんだから。何やってもいいんだよ」「…神なんですね」
「だって、タイソンなんだもん」 ということで、ファン心理の恐ろしさを知ったのでした。

いや私も、もちろん知ってますよ。タイソンが天才だってこと。そりゃあの強さ、格闘家の誰もが魅了されますよね。
でもなー…自伝の中で「東京」っていう見出しがあったから、おっ、と思い見てみると、
「日本人の女はシャイで困ったが、六本木という所に行ったら、尻軽の女が四人ほど見つかって、助かった」
としか書いてなかったら、がっかりしちゃうし、浪費して破産して、全てを手放し、でも
「俺は目が覚めた」ともう一度復活して、大金つかんで、新しい奥さんのために豪邸を建てて
「家具は、トイレットホルダーまで全部アルマーニにした」って読んだら、覚めとらーん!ってやっぱり突っ込んじゃうじゃないですか。

…ってことを金原先生に言うと、先生はうんうんと聞いて「いいんだよ、美幸さん」と穏やかに言って口を開いたので、次に来る言葉は私にはもちろん分かり、「タイソンなんだから!」と、二人同時に言いました。先生はゲラゲラ笑っていましたが、
「美幸さん、東京の章読んだ?」
「あー、読みましたよ。あれも、もうトホホというか…日本には素晴らしい文化がたくさんあるのに」
「いや、だからさ、この東京に、タイソンとそういう関係になった女が何人かいるわけじゃない。考えるとワクワクしない?俺、それだけでも東京にいて良かった、って思っちゃう」
「え、ええええ…」

そんなところまで?ファン心理恐るべし!私には理解できないと心の底から思ったのでした。
では、また!