2018/9/3
「タイ語奮闘記・2」
江口美幸です。
ソンラム先生が日本に来て、私は毎日少しずつタイ語を勉強してきて、三年半くらい経ちました。
今は、ソンラム先生に言いたいことぐらいはタイ語で言えるようになったし、先生とのコミュニケーションに不自由しない程度にはタイ語が喋れるようになりました。
なるべくタイ語で先生と喋った甲斐があったというものです。練習終わった後にゆっくりお喋りする時間がある時はいいのですが、仕事が忙しくて時間がないときは…ミット間の休憩時間1分の中で、20秒で素早く息を整え、残り40秒でタイ語でお喋りするって、結構難しいんですよ。
はじめのうちは、タイ語が分からないものは片っ端から「先生、これはタイ語で何ていいますか」と訊いていきました。先生は全て丁寧に「それは○○」と答えてくれました。
ある日、ソンラム先生のミット練習の途中で、私がふくらはぎを肉離れしたことがあったのですが、私が床に倒れこみながら「せ、先生、私、足を怪我しました。多分、筋肉が少し切れました」
「肉離れ」のタイ語が分からなかったのでそう言って、一刻も早く氷で冷やして圧迫せねばと焦りながら冷蔵庫の方に這っていこうとしたら、先生は全く慌てることなく
「ああ、それはね〜、タイ語で言うとね〜」
と言い始めたので、
「うわー!先生、今はそれはいいので、お願いですから、氷を取ってくださーい!」
と、涙ぐみながら叫んだこともあります。
私は定期的に「ソンラム先生に熱中症というものを説明し、理解させる」というチャレンジをしていたのですが、ずっと通じず、挫折しておりました。
「加湿器」を説明する時もとても苦労したんです。その存在自体を知らないって人に、それを外国語で説明するというのは、大変に難しいんですよね。
今年の春あたりに「先生、熱中症っていうのはね、暑いと、急に気持ちが悪くなって、倒れちゃって、死ぬ時もあるんです。危ないの」と言うと「ああ!わかるよ」と言ったので「えっ、本当?わかった?」
「お年寄りになると、多くなるよね。心臓が急にドキドキする」「ああ!そうそう、そうです!」やっと分かってくれた、と嬉しくなり「ああ、良かった〜。やっぱりタイにもあるんですか?」
「あるよ、もちろんある。ムエタイの選手も、危ないんだよ。なるやついる」
「あんな暑い中で練習するからですよ。だからね、先生、エアコンをつけた方がいいです」(私はとにかくこれが言いたかった)
「いや、エアコンは関係ないよ。試合の後にすぐ練習するとなりやすいんだ」「え?そうなんですか?」
「うん。そういうときはね、急に唇が青くなって、すぐに顔色も真っ青になる。だから、僕は実はミット練習の時は、唇をちゃんと見て、チェックしているんだよ」
「はい、顔色が青くなりますが…」
「心臓がね、疲れてるんだよ」
ここまで来て、先生が話しているのは心筋梗塞だということに気が付くわけです。
「あっ先生、違う、そうじゃなくて、暑い時になるやつです」
「うん、暑い時になりやすいよ。心臓がドキドキするからね」
「あー、いやー、そうじゃなくてー…」
うん?何?と、不思議そうに私を見る先生。うーむ、今回も通じなかったか…。
また挫折してしまいましたが、しかし、今年の夏に入りかけたとき、先生は「冷房、入れていいよ。入れないといけないんじゃない?」と言うようになりました。…やっと、なって、くれました。
先生はもしかして、暮らしていて自然に熱中症を学んだんでしょうね。えっ、日本人って、暑いと死んじゃうの!?って、驚いたのかもしれません。
そして今年のこの猛暑!いや〜、良かった良かった。命拾いです。
ちなみに私のもう一人の先生、金原先生はきちんと教科書でタイ語を学んでいる私と違って、タイでムエタイ修行をしたり試合に出たりしていたので、リアルなタイ語を知ってます。
「美幸さん、○○ってタイ語知ってる?」「聞いたことないです。どういう意味ですかそれ?」「いやあ…言ってみてよ。大きな声で、言ってみて」
ニヤニヤ顔で言う金原先生。
…絶対に言うの嫌です!
ではまたー。チューガンマイナ!