2017/2/26
「続・かねはら整骨院で美顔体験」
江口美幸です。
前回のあらすじは、美顔をしてもらいに、かねはら整骨院に来た私。
でも金原先生、パックして、マッサージ機に脚を固定された状態の私に店番を任せ、忘れた携帯を取りに行ってしまいました。
…私はしばらく、先生のバイクに乗って消えた後ろ姿に手を伸ばしたまま、呆然としていました。
電話が鳴っても困るし、第一、今のこの状態で患者さんが訪ねて来たらどうするのでしょうか。
足をマッサージ機に入れてパックした、横たわった女があたふたしながら「そこに座って20分ほどお待ちください」と言って…その20分をどうすればいいのでしょう。
ていうか私、漫画に出てくるような「パックしてる人」なんですよ。恥ずかしい、恥ずかし過ぎます。
訪ねて来た人もこんな顔が急に出てきたらびっくりしちゃって、もう二度と来ないよー。
先生、何を根拠に大丈夫だって言ったんだろう…ああ、早く帰って来て欲しい…。
とても眠るどころじゃなく、ベッドの上でビクビクしながら先生の帰りを待っていました。玄関先で何か物音がするたび、ビクッとして、身体が固まります。
…長かった20分が過ぎて、外からバイクの音が聞こえて来た時は、嬉しくてちょっと泣きそうでした。
「あああ先生、おかえりなさいいー」
「電話あった？」
「いいえ！ドキドキしたんですけど、なかったです」
「そんなもんだよ」
先生はさらりと言って
「さあちょうどいい時間だ。パック取って」「あ、はい…」
ペロンとパックを剥がして、私が自分で顔を触ってみると、おー、確かに！いつもの中年女の肌のゴワゴワ感じゃなくて、もちもちしてる！子供のほっぺみたいになってる！思わず大声で
「あっ、すごいです先生！もちもちしてる！」と言うと
「えっ本当？ちょっとこっち向いてみて」
先生の方を向くと、私の顔をじっと見て
「ああ…うんうん。ああ」
と中途半端に頷く先生。
先生、ピンと来てないんですね…。ていうか正直、私の顔なんかまじまじ見たこともないし、違いがわからないのでしょう。
何故だか私の方がムキになり、
「いや先生、本当ですよ。触った感じが全然違います。硬さがなくなって、すごく柔らかい。触ってください」
先生は手を伸ばして私のほっぺをムニムニとつまみ、
「ああ…うんうん。おー…」
…先生…全然ピンと来てないんですね…悲しい。
でも確かに、やる前に触ってないから触感の違いが分からないしね、と諦めて、先生に今日のお支払いをしようとしました。
サービスで安くしてくれようとする先生と、レジの前でおばちゃんらしく押し問答して、でも先生に押し負けて、安くしてもらって、恐縮しながらお礼を言い、色々な話をしながら玄関のところで靴を履こうとしたら、ふと先生が
「昨日練習した、チョークとヘッドロックのコンビネーション、分かった？」
ときいてきました。
そう、昨日の練習でやったのは、後ろから首を絞めあげるチョークスリーパーと、それをディフェンスされた時の、ヘッドロックとの素早い切り替え。ダンナはできてたけど、私はできてなかった…。これも、いつも悲しい。
「いや、難しくて、正直よく分からなかったです。手の位置が、うまく定まらなくて」
「うーんそうか、よし」
次の瞬間、先生は私の後ろに回り、首をチョークしておりました。うわ！
「まずさ、チョークを狙いに行くじゃない。そしたら、相手が防ごうとして、こう来るよね」「はっ、はい！」
ちなみにその時の私の格好は、もちろん練習着ではなく、普通のお出掛け用の服を着ています。美顔ということで、上品な雰囲気にひたろうと、いつもよりお洒落しておりました。
もし、いつも来ているという常連のおじいちゃんやおばあちゃんが、今玄関を開けて、先生が一般人と思える女性の首を後ろから絞め上げているのを目撃したら、どうするかしら…という一抹の不安もありましたが、しかし、先生の技術を少しでも教えてもらえるのはとても嬉しい！ラッキー！っていう感じです。どこででも、喜んで教えてもらいます。
「一度でチョーク行くのは難しいなと思ったら、手を素早くこの角度にして」
「はいっ」
「このまま相手の頬骨に滑らすように…」と、先生の手首の内側の骨の場所を、私の頬骨に当てました。
その瞬間「わっ」と先生は驚いた声を上げて、ぱっと手を離しました。
「え？」どうしたのかと思い、私が振り返ると、先生はヘッドロックを極める自分の手首の場所を見て、私の顔をまじまじ見て
「…美幸さん、顔がもちもちになってる」
と言いました。
ええ！ええ！先生、先ほど私はそう言いましたよね。で、さっき指で触っても全然分からなかったのに、ヘッドロックを極める手首の感覚で分かるって、どういうことでしょうか？
(はっ！いつものヘッドロックと違う！)と感じたんでしょうね。…先生の手首の感覚、すごくないですか？
帰りの電車の中で、格闘家は、どこまでも格闘家なんだなあ、と、感服し、少しニヤニヤしながら、自分の柔らかくなったほっぺを頻繁に触っておりました。
皆さんも、ほっぺもちもちにしたかったら、かねはら整骨院へ是非どうぞ！