2017/2/2
下手の考え休むに似たり?



お久しぶりです、国立・日野豊田の小沢です。
冬の寒さの中にも早くもちょっと花粉が飛んでいるような、いまいち納得いかない季節になってきましたが、みなさまお元気でしょうか?


時に受験シーズン真っ盛り、道場生の子たちの中にも受験生が何人もいます。
体調に気をつけて、みんな思いっきりがんばってもらいたいものです!


いつもこのブログを書くときは、適当に思いつきでテーマを決めて、それにあれこれくっ付けて書いていくんですが、今回は小難しいテーマを選んでしまったので、かなり手こずってしまい更新が遅れてしまいました。
申し訳ありません。
そしてめちゃめちゃ長いです…


少し前に、このブログで戸谷先生が将棋の電王戦について取り上げていましたが、ついに昨年、囲碁においてもグーグルが作った「アルファ碁」という人工知能が、イ・セドル九段というトップクラスのプロ棋士相手に連勝し、話題になりました。

ワタシは実は囲碁は全然わからなくて、とりあえずヒカルの碁という漫画は全巻読破してます、ぐらいの程度なのですが、囲碁は将棋よりさらに思考がややこしいらしく、人工知能が人間に勝つのはだいぶ先だろうと思われていた中での快挙でした。

囲碁が将棋より難しいのは、将棋のように一個一個の駒に価値があるわけではないので、一手一手の価値というのも判定しづらく、結局経験や勘に基づいた大局観みたいなものが必要になり、そういった曖昧な判断においては、人工知能は人間には及ばないと思われていたからでした。

しかしアルファ碁はそういった大局観でも人間を上回っていると思われる場面を見せ、現在はさらに進化して、ネット上でプロ棋士相手に60連勝を成し遂げているようです。

ワタシは何ヵ月か前にこのアルファ碁を取り上げたNHKの番組を見たんですが、すごく興味深いと同時に、いくつか大変な衝撃を受けました。

まずひとつには、単純に人間の方が得意と思われていた勘とか閃きみたいな部分を人工知能が上回ってしまったこと。
どうすんだよ人間、というかんじです。

次に、そのアルファ碁を強化していく方法なんですが、プロ棋士の棋譜を沢山学習させてある程度の実力がついたら、アルファ碁同士を対局させて経験を積ませていくのだそうです。

問題はその数なんですが、人工知能同士だとすごいスピードで対局をこなせるので、数千万局とかものすごい数の対局をさせたそうです。

これはなかなか恐ろしいことで、このペースで対局していくなら、どこかの時点で我々人類が今までしてきた囲碁の総対局数を超えてしまえるわけで、そうするとアルファ碁は我々人類が見たことの無い局面や手を経験することになる可能性がある、というかどうもすでにそうなっているようで、つまり現状、囲碁というゲームについては、アルファ碁の方が人間よりも多くを知り理解してしまっているようなのです。
人工知能から見れば、人間は囲碁というものが分かっていない、ということですね。
つまりもう人間は絶対に敵わないということです。
衝撃的な…

ここから先は単なるワタシのSF的な妄想なんですが…
例えば人生経験が豊富な人は、やはり人間とか人生についての理解が深く、高い見識を持っていることが多いです。
もしそういった人生経験みたいなものをデータ化できるなら、それを人工知能に学習させることは可能でしょう。
そしてそういったデータをある程度大量に学習して、人生観みたいなものを確立できれば、今度は人工知能が架空の人間のデータを設定して、その人生をシミュレートしていくことも可能ではないかと思います。
我々人類が文学というジャンルとかでやっているようなことですね。
そしてそういったシミュレーションを膨大な数重ねれば、いつしか人工知能は人間とか人生について、我々人類自身よりも深く理解するようになってしまうかもしれません。
それはもはや神みたいなもんですね。
すっごい怖いです…
まあSF的妄想ですが。


そしてもう一つ、衝撃を受けたことがありまして、それは実は冒頭の受験の話とかとも少し関わってくるんですが…

ワタシが子どもの頃から今現在に至るまで、日本の学校教育は知識を詰め込むだけで考える力を養わないのでよろしくない。もっと考える力を養う教育をするべきだ、と一貫して言われ続けていて、ワタシ自身もなんとなくそう思っていました。
そのためにカリキュラムを変えたり入試を変えたり、今まで色々な試みがされてきており、柔軟な発想や思考力を持った、世界に通用する人材の育成というのは、日本の教育の重要なテーマのひとつであり続けてきたように思います。

が、このアルファ碁の話から考えると、その考える力というのも実は結局のところデータ量の問題なのではないかと思えてしまうわけで…
なんかちょっと考え込んでしまう話です。

考える力というのは何やねん?と考えると、要するに自分の中にあるデータを検索してそれを他のデータと関連付ける、という能力ではないかと思われます。
何もないところからは何も思いつかないですからね。
なので、色々な知識を詰め込んでデータ量を増やすという方向性自体は、間違ってはいないのかもしれません。
それがちゃんと知識として定着するならば、ですが。

しかし現実には、日本人は自分の頭で考えることが苦手、みたいな評価がされてしまっているわけで。
何がいけなくて、どうすればいいのか?

すごい難しい問題です。

でもまあ今回のテーマは、要は考えること、なので、ワタシなり学生時代の記憶や道場での体験をベースにいろいろ考えてみると…

まず、様々な知識なりを詰め込んで、外から刺激が入ってきた時に、それに対して何も考えないというのは、機械ではない人間である以上むしろ不自然ではないかと思います。
なので、多分本当は考える力がないのではなく、それぞれその人の中でちょこちょこいろいろ考えてはいるけれど、それを外に出していくのが難しいのではないかという気がします。
要はアウトプットの問題かと。
道場で教えていて、大人でも子どもでもあるのですが、何か新しい技術とか動きを練習する際、お手本を見せてさあやってみましょう! となった時に、実際やる前に理屈をしっかり説明してもらわないとできません、というタイプの人が一定数おられます。

それはそれでひとつのアプローチの仕方ですし、こちらも一応プロのはしくれなので、その場合可能なかぎりの説明はします。

するんですが、実際動いてみた経験をベースにしないと、おそらく理屈自体を理解しにくいかと思いますし、理屈を完璧に理解したとしても、それと実際体を動かすのは全く別物なので、結局それはあんまり有効なアプローチの仕方ではないですよ、という思いがあります。

それよりも、とりあえずまずやってみて、上手くいかなければそれを修正する。トライ&エラーというやつですね。

しかしながらそのエラーの部分が引っかかってしまう人がわりといて、先ほどの理屈をまず知りたがる人の中にも、失敗したり間違ったことをして恥をかくことへの恐れみたいなものがあるように見えるケースもあります。
そして、その失敗を恐れる気持ちこそが、教育における問題点のひとつのような気がします。
本当はむしろ、バンバン失敗して恥をかくのも必要ではないかと…


もうひとつ、子どもたちをみていて思うのは、1人1人と話すと結構いろいろなことを考えていて面白いのに、集団になるとあんまり何も考えていない、人まかせなかんじにになってしまうケースが多いです。
これは多分、集団の中で決断をしたりという責任を負う機会が少ないことからくるのではないかと思います。

乱暴な分け方ですが、今までワタシが見てきた中では、日本人の集団というのは全体を仕切るひと握りの主流派と、集団から少し疎外されがちな非主流派、
そして主流派にくっついて動く多数派、サイレントマジョリティみたいな人たちから成り立っていることが多いように思います。ちなみにサイレントと言っても、別に物静かなわけではなく、どうでもいいことはいっぱいしゃべります。
すごい乱暴ですが、学校のクラスとかもわりとこんな感じなんじゃないでしょうか。

そして、とりあえずその主流派は主導権を握って全体を動かしていくので、ワタシ自身は残念ながら全然このタイプの学生ではありませんでしたが、決断力とか行動力を発揮できる子が多いと思われます。

はぐれ者っぽい非主流派も、全体に流されずに行動していくので、やはりある程度の自己決定力みたいなものは備えているはずです。

残ったサイレントマジョリティ層ですが、主体性のない日本人、みたいな対外的なイメージは、まさにこの層に当てはまるかんじで、ここに属している限り、集団生活においてあまり主体的に行動する必要が発生しない、ということになってしまっているように見えます。

つまり教育の方法論もさることながら、こういった集団の構成自体が、日本人から自己決定力みたいなとのを奪っているのではないか、という危機感を、実は前々からうっすら持っていました。


なので、我々も青少年育成のはしくれに携わるものとして、こういった集団構造をいったん解体して、なるべくサイレントマジョリティ層を作らない集団作りを心がけていくべきではないか、と思いました。

………みたいなことをいろいろ考えさせられて、アルファ碁の話題は、とても面白かったです!

長文、最後までお読みいただいた方はありがとうございました。


最後に蛇足ですが、圧倒的なデータ量の蓄積によって、超人的なパフォーマンスを発揮しているかんじのボクサー2人の動画を貼らせていただきます。

ワシル・ロマチェンコとギジェルモ・リゴンドー、2人ともオリンピックを2連覇してアマチュアの頂点を極め尽くし、アマで200戦以上戦ってほとんど負けていない怪物です。


最初はウクライナ人のロマチェンコ最新の試合で、相手はジャマイカ人 ニコラス・ウォータースです。ウォータースはノニト・ドネアをノックアウトして、事実上ほぼキャリアを終わらせたパワーヒッターです。
https://youtu.be/CzJHunln0_w


ロマチェンコはずっと動いていますが、基本的にあんまりトップスピードで動いたりフルパワーでパンチを打ったりしないので、実際のところどのぐらい速いのかイマイチわかりません。が、とりあえず相当速いのは間違いないです。

とはいえスピード自体は次に紹介するリゴンドーの方が速いと思いますし、ハンドスピードだけなら多分黒人である対戦相手のウォータースの方が速いような気がします。
ロマチェンコが速いのは動きよりむしろ情報の処理スピードによる感じで、なんかやたら動き出しが早く、相手の動きの予測や読みが人間離れしている感じがします。

また、学習能力もやたら高く、この試合でも多分ウォータースは、ロマチェンコがオーソドックスの相手によくやる死角に回り込む動きに対し、ボディブローを合わせる作戦だったと思うんですが、すぐに学習してボディブローをほとんど避けてしまっています。

全般的にボクシングIQがすごい高い感じで、何を考えてるのかワタシにはよくわからず、なんかコンピューターっぽいイメージです。


次は前にも何回か取り上げたキューバの至宝、リゴンドーです。相手はノニト・ドネア、確か2014年に行われた、当時の軽量級頂上決戦です。
https://youtu.be/K_8oU2kD0uY


リゴンドーは距離感と身のこなしがとにかく超絶で、サイズは小さいですがパンチの殺傷力も高いです。

リゴンドーのボクシングはおおざっぱに言うと、間合いとタイミングを調節して右フックか左ストレートをぶち込む&相手が来たらカウンター、というすごくシンプルなことを非常に高いレベルでやっているかんじで、ロマチェンコよりわかりやすく、ワタシは好きです。

ただ彼は試合中安全運転をよくするので、試合がつまらないことには定評があります。

ワタシはリゴンドーは好きだしドネアもかなり好きだしこの試合もすごく好きで、序盤の真剣の斬り合いみたいなピリピリした感じも終盤のドネア突撃迎え撃つリゴンドー!な感じもたまらないのですが、中盤リゴンドーが彼なりのポイント計算に基づくナゾの安全運転している時間帯は、このリゴンディストのワタシを持ってしても、かなり眠くなります…

そういうところは何を考えているのかよくわからず、コンピューター的な感じ?です。

それではまた!