2016/4/15
「ソンラム先生、日本の文化にびっくりする」
江口美幸です。
今週、タイの3度あるお正月の中で一番盛大に祝われる「ソンクラン」がありました。
テレビか何かで観たことがある人もいるかもしれませんが、別名「水掛け祭り」です。とにかくひたすら水を掛け合います。道を歩いているだけで、バシャバシャ水を掛けられて、びっしょりになるそうです。
家庭の中ではちゃんと、年長者の手によい香りのする水をそっとかけて「おめでとうございます」と言う、という元々の形でお祝いするらしいんですが。
ちなみに、後二つのお正月は、日本と同じ一月一日と、2月はじめの、中国のお正月(日本で言う旧正月)です。でもこちらはさほどメインではないので、お祝いも大変アッサリとしてます。
さてここは日本なので、ソンクランの間はソンラム先生は働き、一月のお正月にはお休みしました。
お正月休みの間に、ソンラム先生が、タイでよくある感じの金の仏像の写真と「サワディーピーマイ(あけましておめでとう)2559年」とメールを送ってきたので、私もサルが温泉に入っている写真と「あけましておめでとうございます。今年は猿年ですね」と頑張ってタイ文字で書いて送りました。
タイの歴はキリストの誕生日から数える西暦でなくお釈迦様の誕生日から数える仏暦なので、今年は2559年になります。
そして稽古の時に、猿の写真から、先生と日本の温泉の話になりました。
お湯に浸かる習慣がない国から来たタイの人達は、日本に暮らすとお風呂大好きになるようです。やっぱりあれは、寒さがなければ気持ちがいいと感じないのでしょう。
あんな暑い国で更に湯に入ろうとは思わないでしょうからねえ。その代わり、タイは水浴びは一日に何回もします。
温泉の話をしている途中に、急にソンラム先生が小声になり「日本の温泉、男と女は、一緒に入るの?」ときいてきました。
「ああ、混浴ですね!数は少ないけどありますよ!露天風呂っていう外のお風呂で」
先生、きっとどこかで、日本には男と女が一緒に入る文化があるらしい、と聞いたのでしょう。
「外?え?外は人がいっぱい」「いや、周りは山なんですよ。大抵、すごーく田舎の方なんです、人がほとんどいないんです」「水着着る?タオルとか巻くの?」「いや、それはマナー違反です。裸で」
それを聞いた先生、えーっ…という、信じらない顔で絶句し、そばにあった椅子にペタッと座ってしまいました。そして私の顔を見て「でも…でも」と言って腰の辺りを隠すような仕草をして、言葉が出て来ずにいました。
「先生、でも混浴にいるのは老人だけですよ」と言ったら、ああ…という安心した顔をされましたが、その時に私は、そうだ!と、何年か前に実際にあった出来事を思い出しました。
道場の職員と黒帯数人で伊豆に行き、男性数人で混浴露天に行ったら、何と途中で20代後半あたりの若い女性2人が入ってきて、普通にぷるーんと入ってきたという奇跡の出来事があったのです。
それからポール先生は日本の温泉は素晴らしいと絶賛するようになったのですが、私はその話をソンラム先生にしてあげました。
先生は氷のように固まって話を聞いていたので私は可笑しくなり「先生、行きたいですか?」ときいてみました。
先生は目を見開いたまましばらく虚空を見つめていましたが、急にはっきりとした日本語で「ムリー??」と叫びました。
先生…なんてシャイなんでしょうか。年は二つしか違わないのに、最近「どーでもいーや。がっはっは」という感じで、どんどんおばさん化している私とはえらい違いです。
ひとしきり笑ったし、さて練習しようと支度をはじめたら、先生が「…プルアイ(裸)は日本語で何て言うの?」と、きいてきました。
…えーと先生、今までタイ語で話していたので会話の内容は周りの人にはわからなかったし、だから下ネタっぽくても全然平気で話せたんですが、でもその言葉を道場の中で日本語で言ってしまうとですね…
周りにいたのは数人でしたが、ソンラム先生がいきなりムリーッて大声出して、次は二人でいきなり
「裸」「ハ…ダカ」「はだか」「ハダカ」「裸」「はだか」
と繰り返し始めたので、じっとこちらを見ており、かなり恥ずかしかったです。
先生がタイ人の友達にきっとこの話をして、最近とても増えているタイ人の訪日観光客はまた更に増えると思います。
ちなみに、私がそれからシャドーとかしていて、20分くらい経ってから、またソンラム先生が「温泉で、もし女性が入ってきたら、どうすればいいの」ときいたので、ずっとシュミレーションしてたんだなと思いましたが、どうすると言われても…と少し困り「挨拶して、こんにちはー、いい天気ですねー、どこから来たんですかー、とか。それから…お互い見合うとか」と少しふざけて言ったら、目を剥いて「ムリー!ムリムリムリ」と先生がまたバニックになってしまったので「先生、冗談、冗談です」と慌てて言った私でした…。