2016/11/14
ソンラム先生かねはら整骨院に行く
江口美幸です。
私の敬愛する先生二人の身体感覚が、地球で言うと、南極と北極くらいに距離の離れた二人だということには早々に気づいては、おりました。
だから4月の末、桜も散ったある日に金原先生が来た時に
「あー暑い暑い!もう夏だな!」
とおっしゃって、次の日にソンラム先生が来たときに
「みゆき、冬っていうのは、いつ終わるの?」
と訊ねてきたときにも、私はさほど驚きはしなかったです。
さて、ソンラム先生がある日
「ここ何日か、腰が痛い」
と言ってきました。
「最近寒くなってきたから。朝、起きた時に背中が硬くて、痛くなる」
と。
そうですね先生。寒いと血行が悪くなり、筋肉が硬くなりますよね。間違っていません。…ただ、今日は8月末なんですけど。
ということで、ちょうど足を痛めていたダンナさんとソンラム先生を連れて、用賀にある「かねはら整骨院」に行くことにしました。
前に受けた鍼治療もとてもいいのですが、ソンラム先生、鍼がトラウマになってしまったらしく、異常に怖がるようになってしまいました。まあ、鍼の文化がないタイの人に、いきなり「身体に針を刺す」という治療を受けさせた私も、悪いといえば悪かったです。
しかし私はうっかり「長袖の服を持って来てくださいね」とソンラム先生に言うのを忘れてしまいました。
ソンラム先生と金原先生がかち合う日は私があらかじめソンラム先生に「今日金原先生来ます。長袖必要」とメールします。
するとソンラム先生は暖かい上着を持って来ます。金原先生が入ってきたと見るや、小走りに更衣室に入って行き、暖かい格好で出てきます。
そして秋・冬などは、ソンラム先生がぬくぬくと温めていた道場を、金原先生が
「あっちーあっちー」
と言って窓を開けてしまうのを、恨みがましい目で見ています。
案の定、待合室にいて5分程経つと、ソンラム先生は背中を丸めて腕をさすりはじめました。
ああやっぱり…失敗した…金原先生はこれでも患者さんに気を使って、先生にしては冷房を弱めにしているのだけど、それでもまだ寒い…。
「先生、寒いですか?」
「うん、寒い…」
「じゃあ、金原先生に冷房を弱めにしてくれと言いましょうか」
と話していたら、待合室のカーテンがしゃっと開いて
「お待たせ。入ってー」
と大判タオルで顔中の汗を拭き拭き、金原先生が登場しました。
…思わず、私とソンラム先生は黙って顔を見合わせてしまいました。日本人以上に気を使うソンラム先生は私に悲しい顔で
「大丈夫、大丈夫」
と言いました。
す、すみませんソンラム先生。今の汗だくの金原先生に、冷房を弱めて欲しいなんて、私にはとても言えない…。
かねはら整骨院には、金原先生ご自慢の「ハイボルテージ」という電気を流す機械があります。これが凄く効く!初めてこれを受けた時、身体の奥底まで電気が来る感じにびっくりしました。
それをダンナさんの足にも流してもらい、ソンラム先生の腰にも当ててもらいます。
「ポーディ(充分)だと感じたらそう言ってくださいね」
と私が言い終わらないうちにソンラム先生は
「ポーディ」。
きっぱり…いや先生、早い。
ダンナさんとソンラム先生が治療を受けている間、私は、待合室の棚にある金原先生の昔の試合のパンフレットを見ていようかな?顔ツルツルで身体パンパンの若い金原先生を見て「ひゃー先生、若いー」と楽しもうかな?と思っていたら、金原先生が私に
「美幸さん、ほら」
と、ひょいと、直径70センチほどのバランスボード(上が平らなコマみたいな形で、その上に立ってバランスを取るもの)を渡し
「目を開けてできたら、次は目をつぶる」
と早口で言って、忙しく治療に戻りました。
確かに、そのバランスボードは、目を開けていると上手くその上に立つことができますが、目を閉じると全く立てません。
ムキになって立とうと頑張る私…。
「うわわわ、目をつぶると難しい、倒れる〜」
「ポーディ!」
「早いよ、もう少し我慢しろよ」
「むうーいててて、我慢我慢ー」
「師範は我慢し過ぎですよ!数字高すぎ!」
と、治療院の中は、金原先生の好きな永ちゃんの音楽も聴こえないほど賑やかでした。
途中で金原先生の奥様がお手伝いに来たのですが
「まあ、今日は何だか凄く賑わってる。嬉しいわー」
と言ってくれて、このうるさいのを活気だとプラスに捉えてもらい、ほっとしました。
さてソンラム先生の腰も治り、先生により暑い寒いを繰り返すいつも通りの日常が戻ったある日、道場のエアコンが突然、煙をもくもくと吐き、壊れてしまいました。
これは人間で言うと過労死だと思います。ごめんね、極限まで温度も風量も強くしちゃって…でも仕方なかったんだよ…。
ということで、来週、エアコンの工事が入ります。
その間、道場に来たら、皆様、足元にどうぞ気をつけてくださいね。
「格闘家」