2014/12/15
「ひゃあ」



江口美幸です。国分寺道場の人はもう知ってるとは思いますが、実は少し前から、寝技を習ってるんです。
教わっている先生は金原弘光先生といって、ミルコ・クロコップや、ヴァンダレイ・シウバと試合している、大変有名な人です。縁あって、教えて貰えることになりました。それはすごく幸せなことです!

初めて金原先生を見たときの第一印象は「岩石」。岩は岩でも、なんていうか…ほら、日本庭園にある柔らかいやつじゃなくて、花崗岩を掘り出す山にある、どっかーん!とか、がつん!っていう大きさの岩。骨とか関節が、太いのです。ひゃあ!なんかすごいなあ…と単純に驚きました。

教わりはじめて、その技術に、ひゃあ!すごい!と今度は感動して思いました。岩石のような身体なのに、速くて柔らかくて、一瞬にして関節を極めてしまいます。ひゃあ、素晴らしい!この技術を少しでもモノにしたい!と心から思いました。

でも私は寝技は初めてで、はじめはただひたすら、怖かったです。寝技は究極の接近戦だと思うのですが、まー、私の気持ちを正直に言うと、走って逃げて、離れたかったです。
先生がぬっと手を伸ばしてきたときなどは、ひゃあああ〜怖い〜!と心の中で恐怖の叫び声を上げてました。もちろん先生は、私などに対しては、力の千分の一も出してなくて、ひたすらそーっと相手をしてくれてます。でも、それでも怖い…。

更に金原先生、手の指が、なんか変な方向に曲がっているところもあるし、肘は、松の木の根元みたいに、コブができているというか、もう、普通の肘の形ではないんです。色んなところが変形している…ひゃあ、一体どんなことしたら、こういう形になるんだろう?

そんな先生が、今年の全日本を観に来てくれました。先生の第一声は「痛い〜うわ〜痛いなこれは!」と言って私の方を向き、本当に痛そうな、ちょっと切なそうな顔で「空手って痛いですねえ!」と言いました。
私は何と言っていいか分からず、困ってしまいました。先生のやってることの方が、遥かに痛そうな気がするんですが…。空手は、そんな風に肘が変形しませんし…。そういえばラジャダムナンのチャンピオン、ソンラム先生も、おでこのところに、治療針(1センチくらいの、細くて、小さーいやつ)をうたれた、と言って、本当に怖そうに「コワイ、コワイ」と言ったことがありました。しかしそう言いながら指差している先生のおでこには、試合でザックリと切られたのであろう、肘打ちの跡がいくつもあって…その時に感じた不思議な気持ちを、全日本を見ながら「おおー、痛ててて。今のは痛いぞー。いたたたた」とずっと言っている先生を見ながら感じました。
ものすごーく強い人は、どこか可愛らしいところがあるなあと思ったのですが、やはり痛い思いをしている人は、人の痛みも分かるわけで、共感能力が優れている、ということなのかもしれません。

寝技は全く新しいことなので新鮮で、大変に面白いです。怖いけどワクワクして楽しい!頑張ります…と、いつもはここで終わるところなんですが、ここで一つ問題が発生しました。
どうやら、先生は究極の暑がりさんらしい、ということが分かってきました。やはりあのぶ厚い筋肉が、巨大な窯みたいに熱を作り出していると思われます。
最近のこの寒さの中、「じゃーはじめましょうか」と言って、ガラガラと窓を開ける先生…。ひゃあ?。そして大粒の汗を額に浮かべる先生…。
私達は合わせる立場ですから全く構わないんですが、ただ、うちには究極の寒がりさんであるタイ人の先生がいる…。かち合ったとき、どうすればいいんだ…今はまだいいけど、夏は? ひゃあ大変!気温6度で大粒の汗をかいていた金原先生が、夏に冷房なしの道場に来たらどうなる? いやいやきっと発狂。道場が壊れる!(先生を怪獣扱い)。

ひゃあ、なんとかしなければいけません。夏までに知恵を絞って、考えます!