2011/7/28
松林図屏風


八王子 八王子みなみ野担当の大谷です 苦しいぞ九回目 さて何書くか・・

古い話ですが 長谷川等伯の没後四百年を記念して日本中に散らばるコレクションが一挙集結 日本各地の寺社仏閣にまわる暇も根気もない我が輩には千載一遇のチャンス 逃してなるものか 行くしかない。
 いざ上野へ

トーハクと言えば水墨の国宝【松林図屏風】が有名ですが時の権力者に求められたのはやはりキンキンキラキラ金碧画 何故 あの消去方の極意にたどり着いたのか? ライバルの永徳に勝つために何を得 何を失ったのか?

元々 絵仏師だったトーハクが日本一の絵師になるため花の都 京に上ります 。
田舎者が夢を見るのはいつの世も同じですが家族を連れて行くのは普通じゃない 余程 金に困ったか自信があったのか?

田舎時代の絵を見ると確かに上手い 都会に行ってもやれそうです。 しかし 当時は狩野派が独占状態 割って入る隙間なし 普通なら諦めるところですがこの方は諦めない 絵を勉強し直します 曽我派に始まり しまいにはあの狩野派まで 謙虚でなければ出来ない努力 20年以上も歴史上に姿を表しません まさに研鑽の日々 芽が出るのはなんと50歳を過ぎてから(汗) その歳になると売り込み方も強引です。 頼まれてもいないのに寺の住職の留守中 周りの制止も聞かず あっという間に襖絵を!
桐の文様を牡丹雪に見立てて雪舟もびっくりの水墨画を描きます。
もちろん本人 根拠もないのに雪舟の継承者を自認してます。 ここから人生好転します。 有名な利休 信玄などの肖像もトーハクの手によるものです。 この辺は仏画時代のテクニック生きてます。
利休などの人脈を得ていよいよ狩野派の首領、永徳に勝負を挑みます 御所の仕事に割り込んだり 関白 秀吉の仕事を指名されたりします。 ここで描いた金碧画が有名な国宝【楓図】です。 狩野派が得意な絵ですがトーハクが描くと違います。 叙情豊かな草木ボウ ボウの金碧画 まさにボウボウです。 生い茂ってます。(汗) しかし頂点を極め一門の隆盛を託すべき息子が亡くなります。 噂には狩野派に毒殺されたとも言われています・・・

その失意の底で描かれたのが冒頭の【松林図屏風】六曲二双の不思議な屏風です。 故郷 七尾の風景といわれるこの作品 まるでその場に居合わせたかのような錯覚さえ抱かせます。 水墨の余白のみで空気や湿度まで表現し日本海の風まで感じさせます。 画壇の最高権力を追い求めたがゆえに失ったものは大きく 権力者のためでなく 自分自身のために描いたともいえる厳しい故郷のモノトーンの景色は トーハクの心象風景だったのだろうか・・・。
余白で表現し 描かずに表現する。 まさに消去法の極意 聞くところによるとこれは下書きの下絵だったらしい!? それって王羲之の蘭亭序と同じじゃん。 清書したけど下書き以上のものは出来なかったってヤツ。 一生に一回しか描けないもの。 神が降りて来てるっ。 まさに神業!

果たして我が輩はトーハクを理解出来たのであろうか? 次回がないことを祈りつつ・・・