2010/6/2
カイタくん



八王子 八王子みなみ野担当の大谷です。

節目にもなる記念すべき五回目 区切りもいいので最終回にしたい気分 さて何書くか・・・

25年も前に雑誌で見て衝撃を受けた村山槐多の傑作【尿する裸僧】、没後90年を記念して没した地、渋谷にて回顧展、
一生に一度は見てみたかったこの怪作、拝みに行くしかない。
25年の時を経て いざ松濤へ。

奇行で知られたこの男、茜色の絵の具 ガランスに見入られて全てを真っ赤にしようと挑戦します。
本人曰く、
「ためらふな、恥ぢるな まつすぐにゆけ 汝のガランスのチューブをとって
汝のパレットに直角に突き出し まつすぐにしぼれ そのガランスをまつすぐに塗れ 生のみに活々と塗れ
一本のガランスをつくせよ 空もガランスに塗れ 木もガランスに描け 草もガランスにかけ □□をもガランスにて描き奉れ
神をもガランスにて描き奉れ ためらふな、恥ぢるな まつすぐにゆけ 汝の貧乏を一本のガランスにて塗りかくせ」

うたった本人 アナーキーです。 狂ってます。
本人 絵を描くだけではなく詩も小説も書きましたが、10代のときに作った雑誌、その名も 「強盗!」
自ら作った出版社は凶刃社!?
ミチロウも町蔵もビックリです。
不定期発行と気まぐれな雑誌ですが命かけてるのが伝わります。

くるわん くるわん 我くるわん くるいて描かん くるいて描かん 心のうちを張り裂けてくるいて描かん!

と本人 狂人自認してます。

大正時代には夭折の天才洋画家が数人いましたがカイタが一番パンクです。
結核という死の病と極貧という環境が自虐的な思想とデカダンスな行動を生んだことは想像し難くもないですが、
この人 以外にファンが多い。江戸川乱歩や高村光太郎などが知られます。

死を前提にしてるかのように生き急ぐ心の内に秘めたる狂気性、ニックネームは火だるまカイタ、竜三朗に憧れたタッチは
裸婦の絵となり流麗な曲線を生みます。力強さはゴッホにも似ています。
恋愛の対象や自画像を多く描きますが対象の中には同性も含まれています(汗)。
美しいものには目がなかったのでしょう・・・

さて問題の【尿する裸僧】ハッキリ言って発禁ものです(汗)。
事実 発表されてから60年もの間 行方が分からなかったもの。よく燃やされなかったと感心します。
見てるこっちが恥ずかしくなります。聖なる象徴でもある僧侶が素っ裸で勢いよく尿を放ってます。
しかも托鉢の椀に!? 反骨なのか自らを解放しているのか作者の意図が解りません。
解るのはただただ狂気のみ。限定された条件の中でのみ人は輝くのか? その輝きは妖艶な魅力を放っています。
死ぬ気だったのか血を吐いては酒を飲みを繰り返し倒れます。
最後は猛威を振るったスペイン風邪で呆気なく22歳で逝ってしまいます。
遺書を残しています。
「たとえ私の生が私の罪でないにしろ私は地獄に落ちるでせう 最低の地獄へ さらば!」
と潔く決別してます。
しかし詩の中の一節に 生きて普通に絵を描き続けたいと願う若者の姿がありました。
そりゃそうだろ?若いからやりたいこと沢山あったでしょ。でもヤツは本気だったと思う・・・
果たして我が輩はカイタを理解出来たのであろうか? 次回がないことを祈りつつ・・・。